異色の本格ミステリ作家
アメリカの女流本格推理小説家で、ユニークで様々な趣向を凝らした技巧派ミステリを世に送り出した異色の作家です。本名はパトリシア・マガーといいますが、本名で呼ばれたり、パトリシアの愛称のパットを用いてパット・マガーと呼ばれたりもしています。
ネブラスカ大学を卒業後にコロンビア大学でジャーナリズムを専攻してその知識を身につけた後、アメリカ道路施設協会の広報室長、建築雑誌副編集長などを勤める傍らミュージカルやコメディなどを書いていましたが、とある懸賞小説の募集広告を見てミステリに関心を持ち始めます。
結局その懸賞には落選してしまったのですが、その後ミステリ作家を志向するようになり、やがて発表したのが1946年の「被害者を捜せ!」でした。その後は専業の作家として活躍をするようになります。
通常本格ミステリといえば犯人を当てる(Whodunit?)のが普通ですが、彼女の初期に発表した5作品はこれとは一線を画して被害者・探偵・目撃者を推理させるという、従来にはなかった画期的な作品となりました。
そのためこの(Whodunin)と名づけられたマガーの作品は、発表当時人々に鮮烈な印象を与えるとともに大いに歓迎され、また今日に至ってもその印象は薄れることはありません。
その後はサスペンス色の濃い本格作品や、セレナ・ミードをシリーズ探偵としてスパイものなどを発表しましたが、初期の5作品の作家としてのイメージが強いようです。
またミステリ以外にゴシック・ロマンスや普通小説もいくつか発表しています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Is There a Traitor in the House ? | 1964 | - | スパイ |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Legacy of Danger (危険の遺産) |
1970 | - | スパイ、本国EQMMに掲載された15編を中心に再構成された連作短編集 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Campaign Fever キャンペーン熱 |
HMM'75.6 | ||
2 | Legacy of Danger 危険の遺産 |
1963 | HMM'77.9 | |
3 | シリーナ、ホワイト・ハウスで窃盗 (シリーナ、ホワイト・ハウスを盗む) |
1964 | 早川文庫80-3「眠れぬ夜の愉しみ アメリカ探偵作家クラブ傑作選3」('82) HMM'80.1 |
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4 | ロシア式隠れ鬼 | 早川文庫2-35「クイーンズ・コレクション1」('83) HMM'76.7 |
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5 | 壁に書かれた数字 (諜報数学初歩) |
早川文庫2-37「クイーンズ・コレクション2」('85) EQ'81.5 |
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6 | 恐怖の連鎖 | 扶桑社ミステリー「ウーマン・オブ・ミステリー」('92) | ||
7 | ベルリンでセレナは─ (旅の終り) |
1968 | 扶桑社ミステリー「ウーマン・オブ・ミステリー2」('95) HMM'68.9 |
EQMM短編コンテスト1位('68) |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 被害者を捜せ! (被害者を探せ) |
1946 | 創元推理文庫164-2 HPB194 |
被害者捜し |
2 | 七人のおば (怖るべき娘達) |
1947 | 創元推理文庫164-4 新樹社 ぶらっく選書1('49) |
被害者・犯人捜し |
3 | 探偵を捜せ! (探偵を探せ) (のろわれた山荘) |
1948 | 創元推理文庫164-1 別冊宝石95('60) 国土社 海外SFミステリー傑作選 14('95) 国土社 少年SF・ミステリー文庫 7('83) 中学一年コース 中学生傑作文庫'62.10(抄訳) |
探偵捜し |
4 | 目撃者を捜せ! | 1949 | 創元推理文庫164-5 | 目撃者捜し |
5 | 四人の女 | 1950 | 創元推理文庫164-3 | 被害者捜し |
6 | Death in a Million Living Rooms (英 Die Laughing) |
1951 | - | |
7 | Fatal in My Fashion | 1954 | - | |
8 | Murder Is Absurd | 1967 | - | |
9 | Stranger with My Face | 1968 | - | |
10 | For Richer, For Poorer, Till Death | 1969 | - | |
11 | Daughter of Darkness | 1974 | - | ゴシック・ロマンス |
12 | Dangerous Landing | 1975 | - | ゴシック・ロマンス |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Murder to the Twist 死のツイスト |
1962 | EQMM'63.2 | |
2 | Justice Has a High Price 正義は高くつく (高い買物) |
1963 | 立風書房「現代アメリカ推理小説傑作選3」('82) EQMM'63.6 |
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3 | The Washington D.C. Murder ワシントンD.C.殺人事件 |
HMM'77.8 | ||
4 | This One a Beauty ふるいつきたい殺人事件 |
1971 | HMM'72.2 | キャプテン・ローガン |
5 | The Last Check 最後の小切手 |
1972 | HMM'72.6 | キャプテン・ローガン |
6 | 完璧なアリバイ (疑い晴れて) |
1978 | 光文社文庫「新世界傑作推理12選」('86) 扶桑社ミステリー「スカーレット・レター」('93) EQ'78.9 |
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7 | A Choice of Murders 殺人の選択 |
HMM'74.4 | ||
8 | This One's a Beauty すっきりした犯罪 |
HMM'74.11 | キャプテン・ローガン | |
9 | Winner Takes All 勝者がすべてをえる |
HMM'89.8 HMM'74.4 |
【参考】「被害者を捜せ!」(東京創元社 創元推理文庫)