英国を代表する劇作家の双子
イギリスの劇作家として有名なアンソニー・シェーファーとピーター・シェーファーの双子の合作ペンネーム。二人は劇作家として数々の賞に輝き、アンソニーは探偵ものの舞台劇「スルース」で、ピーターは世界的に有名な音楽家モーツァルトの謎に満ちた生涯を描いた映画「アマデウス」の原作者としてよく知られています。
弟のピーターはロンドンのセント・ポール学校を経てケンブリッジのトリニティー・カレッジを卒業し、1950年にケンブリッジ大学の歴史学の学位を取得。
卒業後はニューヨークの市立図書館や音楽出版社など様々な職業を経験し、その傍ら数多くの劇作品を執筆。映画化もされた「フォロー・ミー」や「エクウス」などの傑作を世に送り出していましたが、更に1979年になると天才音楽家として名声を博するも若くしてこの世を去ったウォルフガング・アマデウス・
モーツァルトの生涯を、宮廷音楽家アントニオ・サリエリとの確執を通して描いた舞台劇「アマデウス」を発表。
この作品は本国イギリスで上演されるやいなやたちまち好評を博し、アメリカ・ニューヨークのブロードウェイでも上演されて大好評を博し、1981年のトニー賞の戯曲部門を受賞するなどの大成功を収めます。
そして1984年にはアメリカで映画化され、こちらもアカデミー賞の8部門を受賞する空前の大ヒット作品となり、一躍その名を知られるようになります。
一方兄のアンソニーの方も、1970年に発表した探偵劇「スルース」で1971年にトニー賞を受賞。翌年には名優ローレンス・オリビエ主演で映画化もされ、日本でも劇団四季によって1973年の初演以来何度も上演されるなど、この作品でその名声を確固たるものとします。
その他にも1972年に巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督によって映画化された「フレンジー」や、ミステリーの女王アガサ・クリスティーの代表作の映画化「ナイル殺人事件」の映画脚本を担当するなど、数多くの実績を残しています。
このように劇作家として華々しい経歴を残した双子の兄弟ですが、実はまだ劇作家として活躍し始める前の1950年代前半に、主にピーター・アントニイという二人のファースト・ネームをかけ合わせて作ったと思われる合作ペンネームを用いて、ヴァンダイク型の顎ひげにキューバ葉巻を愛好する巨漢の骨董屋探偵ヴェリティを主人公とする密室ものの本格ミステリを何作品か発表しています。
中でも1951年に発表した最初の長編「衣裳戸棚の女」は、兄のアンソニーがミステリ雑誌で書評コラムを担当するなど大のミステリファンだったこともあってか、英国ミステリ伝統のブラック・ユーモアとウィットに富んだ会話を織り交ぜながら、入念に練り上げられたプロットに意外な結末という本格ミステリの醍醐味を存分に堪能させてくれる上質の本格ミステリに仕上がっていると言われています。
そしてミステリ評論家ロバート・エイディーからは”過去40年に書かれた密室もののベスト”と評されるなど、コアな本格ファンから高い支持を集めている幻の傑作です。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 衣裳戸棚の女 | 1951 | 創元推理文庫299-1 | |
2 | ベヴァリー・クラブ | 1952 | 原書房 ヴィンテージ・ミステリー・シリーズ('10) | |
3 | Withered Murder | 1955 | - | A&P・シェーファー名義 ファゾムの名でヴェリティ登場 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Before and After 使用前、使用後 |
1953 | EQ'97.5(117) |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 探偵(スルース) | 1970 | テアトロ'73.10(367)(劇団四季の上演用台本) | トニー賞('71) 映画化('72) |
2 | Murderer | 1979 | - | |
3 | Whodunnit | 1983 | - |
「フレンジー」
(1972年)
(ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン)
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Mr. Forbush and the Penguins (米 Cry of the Penguins) |
1971 | - | |
2 | Frenzy (フレンジー) |
1972 | 角川文庫('72)(アーサー・ラ・バーン原作) | アルフレッド・ヒッチコック監督で映画化 |
3 | 探偵スルース | パック・イン・ビデオ(ビデオ・字幕スーパー)('83) | 戯曲の映画化 | |
4 | The Wicker Man | 1973 | - | |
5 | ナイル殺人事件(英) | 1978 | ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン('08) ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン「アガサ・クリスティ:ミステリーDVDコレクション」(DVD-BOX)('07) ジェネオン エンタテインメント('04) カルチュア・パブリッシャーズ('00) |
監督:ジョン・ギラーミン 脚本:アンソニー・シェイファー 主演:ピーター・ユスティノフ 原作:アガサ・クリスティー「ナイルに死す」 |
6 | Absolution (Murder by Confession) |
1979 | - | 同名映画のノヴェライズ |
7 | Rough Cut | 1980 | - | |
8 | 地中海殺人事件(英) | 1982 | ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン('08) ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン「アガサ・クリスティ:ミステリーDVDコレクション」(DVD-BOX)('07) ジェネオン エンタテインメント('04) カルチュア・パブリッシャーズ('00) |
監督:ガイ・ハミルトン 脚本:アンソニー・シェイファー 主演:ピーター・ユスティノフ 原作:アガサ・クリスティー「白昼の悪魔」 |
9 | The Sting II | 1983 | - | |
10 | Appointment with Death | 1988 | - | |
11 | Sommersby | 1993 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Larger Than Life 思い出の家 |
1953 | EQ'97.9(119) |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Salt Land (塩の地) |
1954 | - | 最初の作品 |
2 | Balance of Terror (恐怖の均衡) |
1957 | - | |
3 | The Prodigal Father | - | ||
4 | Five Finger Exercise (五重奏) |
1958 | - | イブニング・スタンダード賞('58) ニューヨーク劇評家賞('60) |
5 | 自分の耳 他人の目 | 1962 | テアトロ(戯曲)('77) | 「自分の耳」と「他人の目」の2中編を収録 |
6 | The Establishment | 1963 | - | |
7 | The Merry Roosters Panto | - | ||
8 | The Royal Hunt of the Sun (太陽の国の征服) |
1864 | - | 映画化('69) |
9 | ブラック・コメディ | 1965 | 劇書房('82) 成美堂('78) |
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10 | The Pad and How to Use It | 1966 | - | |
11 | The White Liars (罪のない嘘) |
1967 | - | |
12 | The Battle of Shrivings (シュライヴィングズの戦い) |
1970 | - | |
13 | The Public Eye (Follow Me) (フォロー・ミー) |
1972 | - | 映画化('72) |
14 | エクウス | 1973 | テアトロ('85) | 映画化('77) トニー賞('75) |
15 | Amadeus アマデウス |
1979 | 劇書房(戯曲)('82) | モーツァルトを扱った作品 トニー賞('81) 映画化('84)、アカデミー賞8部門受賞 |
16 | Black Mischief | 1983 | - | |
17 | Yonadab | 1985 | - | |
18 | レティスとラベッジ | 1987 | 論創社(戯曲)('89) | |
19 | This Savage Parade | - | ||
20 | Appointment with Death | 1988 | - | ミステリ |
21 | Whom Do I Have the Honour of Addressing? | 1990 | - | |
22 | The Gift of the Gorgon | 1992 | - | |
23 | Footfalls | 1993 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Suffer a Witch 魔女の苦しみ |
1954 | EQ'97.9(119) |