アメリカの本格推理小説家ジェイムズ・ヤッフェの生んだ”安楽椅子探偵”として有名なユダヤ系アメリカ人で初老で未亡人の女性探偵です。本名は明らかにされておらず、作品中でも「ママ」としか呼ばれていません。
ニューヨーク・イーストサイドの貧民街で育ち、18歳の時3つ年上の同じユダヤ系アメリカ人の男性と結婚。以後は同じニューヨークのブロンクスに移り住み、そこで一人息子デイヴィッドが誕生。そしてこの物語は彼女の一人息子デイヴィッドとその妻シャーリーの3人で毎週金曜に開く夕食会の席上での息子夫婦の話から始まります。
大学を卒業した後ニューヨーク市警の殺人課刑事となった息子のデイヴィッドが、自分の担当する難事件について話し始めるのですが、息子の話をたった一度聞いただけでママは鮮やかに推理を披露し瞬く間に事件を解決して見せます。
また事件の推理だけでなく、いつもママに軽くあしらわれるワトスン役のデイヴィッドと、そんな夫を叱咤激励し、ママに対してはライヴァル心を燃やしている才媛の妻シャーリーの3人のやり取りがより一層物語りを楽しいものにしています。
ママが活躍するこのシリーズは、ミステリ専門雑誌〈エラリー・クイーンズ・ミステリマガジン(EQMM)〉に1952年から1968年にかけて短編8作品が発表されて人気となりましたが、この8作品は舞台がニューヨークのブロンクスであるため、〈ブロンクスのママ〉シリーズと称されていました。
しかしその後は新作も発表されることもなく年月が経過。ところが20年後の1988年になってこのシリーズは突然復活を果たします。今度はロッキー山脈の麓にあるメサグランテという都市に移り住んだママと息子のデイヴィッドの二人をシリーズキャラクターとして(妻シャーリーは亡くなっている)、長編4作品が書かれたのです。
こちらは同じようにその舞台となっている地名から〈メサグランテのママ〉シリーズと称されています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | My Mother the Detective | 1997 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | ママは何でも知っている | 1977 | HPB1287 | 日本で独自に編纂 EQアンケート106位 |
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1 | ママは何でも知っている | 1952 | 早川文庫80-2「レディのたくらみ アメリカ探偵作家クラブ傑作選2」('82) HMM'67.12 |
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2 | ママは賭ける | 1953 | HMM'67.10 | ||
3 | ママの春 (春爛漫のママ) |
1954 | 新潮文庫「ビッグ・アップル・ミステリー」('85) EQMM'64.6 |
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4 | ママが泣いた (ママ、涙を見せる) |
講談社文庫「安楽椅子探偵傑作選」('79) HMM'68.1 |
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5 | ママは祈る | 1955 | EQMM'57.1 | ||
6 | ママ、マリアを唄う | 1966 | HMM'67.1 | ||
7 | ママと呪いのミンクコート | 1967 | HMM'67.6 | ||
8 | ママは憶えている | 1968 | ポプラ社「不良少年─あなたのための小さな物語」('03) HMM'72.1 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | ママ、手紙を書く | 1988 | 創元推理文庫103-15 東京創元社('92) |
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2 | ママのクリスマス | 1990 | 創元推理文庫103-16 東京創元社('92) |
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3 | ママは眠りを殺す | 1991 | 創元推理文庫103-17 東京創元社('94) |
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4 | ママ、嘘を見抜く | 1992 | 創元推理文庫103-18 東京創元社('97) |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Mom Lights a Candle ママは蝋燭を灯す |
2002 | ミステリーズ!'03冬(3) |