1841年、アメリカの文豪エドガー・アラン・ポオが発表した「モルグ街の殺人」が推理小説の始まりだといわれています。
また、イギリスではコリンズが1868年に英国初の長編推理小説「月長石」を発表しています。
ポオによって誕生した推理小説は、その後およそ50年の後にシャーロック・ホームズの登場によって、新しい時代を迎えます。
そして、ホームズの成功に他の作家たちも黙ってはいませんでした。ソーンダイク博士やブラウン神父、更には隅の老人、思考機械など、次々とホームズのライヴァルといわれた探偵たちが登場してきます。
この時代は、ホームズに代表されるように、短編推理小説が中心であり、手軽に読めるのも特徴です。
また、フランスではアルセーヌ・ルパンが大喝采を浴び、ルルーが「黄色い部屋の謎」を発表しています。
それまで短編中心だった推理小説の世界ですが、1913年ベントリーの「トレント最後の事件」の大成功を機に、フィルポッツの「赤毛のレドメイン家」、ミルンの「赤い館の秘密」、メイスンの「矢の家」、ノックスの「陸橋殺人事件」、バークリーの「毒入りチョコレート事件」など、その後長編推理小説の名作が次々と発表されます。
また、この頃からクリスティー、ヴァン・ダイン、クイーン、カー、クロフツなど、その後の本格推理小説界を代表する巨匠たちが次々デビューしました。
これらの作家の代表作は多すぎて全部説明するのは大変ですが、クリスティーの「そして誰もいなくなった」や「アクロイド殺し」、ヴァン・ダインの「僧正殺人事件」、クイーンの国名シリーズや「Yの悲劇」、カーの「火刑法廷」、クロフツの「樽」、セイヤーズの「ナイン・テイラーズ」などは、どのアンケートでも上位にくる名作です。
この第一次大戦から1930年代後半にかけてにデビューした作家たちのことを黄金時代の作家と呼んでいます。
ここに含まれているのは、主に1930年代以後に活躍を始め、江戸川乱歩のいう「新本格」派に属するとされる作家たちです。
この時代の作家たちは日本では第二次大戦の混乱があってか紹介が遅れ、不遇のままになっている作家が多々います。
個人的には黄金時代の作家と何の遜色もないと思いますし、黄金時代の中にいれてもいいと思うのですが、逆にこうやって別枠を設けることで、注目を集めさせようという狙いです。
本格作家の紹介数がかなり増えてきたこともあり、黄金時代からポスト黄金時代にかけての作家について更に分けることにしました。
このカテゴリでは黄金からポスト黄金期に活躍した作家たちの中で本国ではすでに忘れ去られてしまっている作家や、日本では邦訳が少なくあまり知られていないと思われる作家をマニア向けに特集して紹介しています。
またポスト期と現代の間で埋れてしまっている作家についても取り上げたいと思います。
いわば”知られざる本格作家”ということで、海外本格ミステリマニアならこれらの作家についても一応は知っておきたいところです
現代においては、アメリカではすっかりハードボイルドやサスペンス・警察小説などが台頭して、本格作家はあまり見受けられません。
イギリスでは相変わらず伝統的な本格ミステリも盛んで、レンデル、ジェイムズの二大女流作家とデクスター、ラヴゼイ、ヒルといった辺りがその代表格のミステリー作家といえるでしょう。
ホームズとそのライヴァル期が過ぎ、黄金時代以降は長編が中心のミステリ界ですが、その中にあって短いながらもひときわ光る短編を発表し続けている作家もいます。
ここでは現代において主に短編の名手として知られている作家とその探偵を紹介します。
法廷を舞台にしたミステリー作品です。弁護士ぺリイ・メイスンのシリーズが最も有名。リーガル本格とリーガル・サスペンスがありますが、ここではリーガル本格が中心です。
1912年、フリーマンが「歌う白骨」で生み出した倒叙推理小説は、倒叙三大名作を経て、コロンボシリーズで花開きました。 コロンボには小説版もあります。
実際の歴史からプロットを生み出して作られたミステリーです。ディクスン・カーが晩年から熱心に発表し、修道士カドフェルシリーズが一大ブームを巻き起こしました。
特にユーモア色の強い作家たちをここに集めてみました。ジャンルは本格ミステリーだけではなく様々です。
やはり何と言っても有名なのはモーリス・ルブランが生んだ怪盗紳士アルセーヌ・ルパンでしょう。
ルパンに影響を与えたとされるのが義賊ラッフルズシリーズであり、著者のホーナングはコナン・ドイルの妹と結婚しています。
現代でもホックの生んだ怪盗ニックのシリーズが人気です。
このジャンルの作品はいわゆるハウダニット(どうやってやったか?)が中心になる作品が多いのが特徴です。
このジャンルの始まりは、アイルズの「殺意」などの一連の作品と言われています。
日本では、当初は本格に比べて低く見られがちなジャンルでしたが、アイリッシュ=ウールリッチの作品が日本にこのジャンルを根づかせました。「幻の女」がこのジャンルの一番の傑作でしょうか。
エド・マクベインの87分署シリーズ「警官嫌い」がもっとも代表的作品と言えるでしょう。
サスペンスの枠に入れてもよいのですが、あえて分けてみました。
アメリカにおいてダシール・ハメットを始祖とし、チャンドラー、ロス・マクドナルドにより築き上げられたジャンルです。 この3人のことをハードボイルドの御三家と呼んでいます。
またスピレーンのマイク・ハマーも当時一大センセーションを巻き起こしました。
現代ではパレッキーやグラフトンらの女流作家も活躍しています。
なんといっても一番有名なのはフレミングの007ことジェイムズ・ボンドでしょう。
また、ル・カレはスマイリー三部作などで有名なスパイ小説の大家です。
このジャンルではギャビン・ライアルとディック・フランシスが巨匠として有名。
フランシスの競馬界を中心とした冒険ドラマは日本でも大変な人気を集めています。
児童向けと聞いて真っ先に思い浮かべるのはシャーロック・ホームズはアルセーヌ・ルパンのリライト版や江戸川乱歩の少年探偵団シリーズだと思います。
アメリカでは〈ストラテメイヤー・シンジケート〉という団体に属する作家たちが書き上げた、男の子向けのハーディー・ボーイズ・シリーズと女の子向けのナンシー・ドルー・シリーズが絶大な支持を集めていて、どちらも1920年代後半から現在まで70年以上に渡って書き続けられています。
更にナンシー・ドルーのライヴァルのように位置づけられているジュディー・ボルトンのシリーズも根強い人気があります。