FRA フレデリック・ダール
(Frédéric Dard)
〔別名 サン・アントニオ (San-Antonio)〕

蝮のような女
「蝮のような女」
(1957年)
(読売新聞社)

 フランスの推理小説家。商業学校を卒業の後、リヨンの新聞社に勤務し映画記事などを書いていましたが、それから間もなくしてミステリーの執筆を始め、1955年発表の長編「悪者は地獄へ行け」を経て1956年発表の長編「甦える旋律」でフランス推理小説大賞を受賞しました。

 この作品は「美女と野獣」などで有名な映画監督で芸術家のジャン・コクトーが絶賛し、以後愛読者たらしめた程のどんでん返しが鮮烈な印象を残す傑作で、これをきっかけとして人気作家の仲間入りを果たします。

 その後もフレデリック・ダール名義で緊迫感溢れるサスペンス小説を多数発表していきますが、その一方でサン・アントニオ名義を用い、筆名と同姓同名のサン・アントニオ警視の活躍する警察小説を数多く発表しています。

 ちなみにサン・アントニオ警視のシリーズの方はダール名義とは打って変って痛快なアクションとスピード感が売りの軽快な読み物といった感じに仕上がっており、160作品を超える人気シリーズとしてフランス国内で絶大な人気を誇りました。

フランス式捜査法
「フランス式捜査法」
(1959年)
(早川書房)

 もっともフランス語特有の言い回しや語呂合わせ、それに隠語や比喩表現が多数用いられているため翻訳でその魅力を伝えることは難しいせいか、日本では邦訳は1作品に留まっています。
 一方ダール名義の作品の方は、代表作を中心として数作品が邦訳されています。

 他にもフレデリック・シャルル名義でスパイ小説を発表したり、ダール名義以前にはカピュト名義やランジュ・ノワール名義ではフランスで流行したノワール小説(暗黒小説)も発表したりするなど、その作風は多岐に渡っています。


■作家ファイル■

出身地
フランス、イゼール県生まれ
生没
1921年6月29日~2000年6月6日
作家としての経歴
1955
フレデリック・ダール名義で長編「悪者は地獄へ行け」を発表
1956
長編「甦える旋律」を発表し、フランス推理小説大賞を受賞
シリーズ探偵
サン・アントニオ警視 (San-Antonio)(サン・アントニオ名義)
カピュト (Kaput)(カピュト名義)
ランジュ・ノワール (L'Ange Noir)(ランジュ・ノワール名義)
代表作
「甦える旋律」
「蝮のような女」「並木通りの男」

■著作リスト■

1 フレデリック・ダール名義の長編

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Pu plomb pour ces demoiselles 1951 -
2 Le Tueur en pantoufles -
3 Quand la mort viendra 1954 -
4 Les salauds vont en enfer
悪者は地獄へ行け
1955 潮書房('56)
5 絶体絶命
(ピンチ)
1956 三笠書房('58)
三笠書房('59改題再版)
6 Les Bras de la nuit
(夜の腕)
-
7 蘇える旋律 文春文庫('80) フランス推理小説大賞
8 Cette mort dont tu parlais
(お前が話した死者)
1957 -
9 On n'en meurt pas
(これでは死ねない)
-
10 Le pain des fssoyeurs
(墓堀人夫のパン)
-
11 蝮のような女 読売新聞社 フランス長編ミステリー傑作集4('86)
12 Des yeux pour pleurer
(泣くための眼)
-
13 Mausolée pour une garce -
14 Ma sale peau blanche
(汚れた白い皮膚)
1958 -
15 Une gueule comme la mienne -
16 Le Tueur triste -
17 生きていたおまえ… 文春文庫('80)
18 Coma 1959 -
19 Les scélérats -
20 Rendez-vous chez un lâche -
21 La dynamite est bonne à boire -
22 Les Mariolles
(Hallali chez les copains)
1960 -
23 Puisque les oiseaux menrent -
24 L'Accident 1961 -
25 Le Monte-Charge -
26 Le Cauchemar de láube -
27 Le Cahier d'absence 1962 -
28 並木通りの男 読売新聞社 フランス長編ミステリー傑作集1('86)
29 La pelouse -
30 Quelgu'un marchait sur ma tombe 1963 -
31 Refaire sa vie 1965 -
32 Une Seconde de toute leauté 1966 -
33 A san Pedre on ailleurs 1968 -
34 Initation au meurtre 1971 -
35 Le Maître de plaisir 1973 -
36 Les Séquestrées 1974 -
37 La Dame qu'on allait voir chez elle 1976 -
38 Les Derniers Mystères de Paris -
39 Cent Histories déconcertantes 1977 -

【邦訳短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Hérédité chargée
悪い遺伝
早川文庫102-1「街中の男」
HMM'84.3
2 Babel
バベル
HMM'85.11
3 Un amateur éclairé
玄人はだし
HMM'03.7

2 サン・アントニオ警視登場作品リスト(サン・アントニオ名義〉

全部で184作品あり

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 フランス式捜査法 1959 HPB1219

3 フレデリック・シャルル名義の主な作品

全部で15作品あり

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 恐怖工作班 1959 河出文庫('88) 邦訳はフレデリック・ダール名義

4 カピュト名義の作品

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 La Foire au asticots 1955 -
2 La Pragée haute -
3 Pas tant de salades -
4 Mise à mort -

5 ランジュ・ノワール名義の作品

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Le Boulevard des allongés 1952 -
2 Le Ventre en l'air 1953 -
3 Le Bouillon de onze heures -
4 Un cinzano pour L'Ange Noir -

6 アンドレ・ベルトミュー名義の作品

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 En légitime défense 1958 -

7 エッセイ・評論その他

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Je le jure 1975 -
2 Les Pensées de San Antonio 1998 -
3 Mes délirades 1999 -

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