ヘイク・タルボット
(Hake Talbot)

　リーガル本格の雄シリル・ヘアーと同じ1900年という節目の年に生まれた、”第二のディクスン・カー”と評されるアメリカの本格推理小説家。

　メリーランド州の港町ボルチモアに生まれ、船員、簿記係、編集者、弁護士、出版者、舞台演出家、大学教授など様々な職業に就いていたといいます。

　作家としてのデビュー作は1931年に本名で発表した演劇の入門書で、ミステリーは大学で演劇について教鞭を執り、また演劇の演出も手掛ける傍ら、空いている時間を利用して書き上げて数作品発表しています。このうち長編は２冊だけですが、いずれも本格ミステリ・マニアの間で高い評価を受けています。

　その作風は、不可能犯罪を扱いつつそれに黄金時代の巨匠ディクスン・カーばりの怪奇趣味と自身の趣味でもある手品的要素を上手く融合させており、まさに本格ファンにはたまらない作家といえます。

　また「魔の淵」は、1981年刊行のエドワード・Ｄ・ホック編の名アンソロジー「密室大集合」の前書き執筆にあたってなされた不可能犯罪もののアンケートの結果で、ディクスン・カーの傑作中の傑作である「三つの棺」に次いで第２位に挙げられる程の高い評価を得ています。