アメリカ本格黄金時代の先駆者
アガサ・クリスティー、エラリー・クイーン、ディクスン・カー、F・W・クロフツと並ぶ、本格黄金時代を代表する巨匠の一人です。
ミステリの始祖といわれるエドガー・アラン・ポオを生み出しながらその後は英国のミステリーに圧され、自国の本格推理小説が低迷していたアメリカに突如として現れ、一躍その頂点に立ちました。その後1930年代に現われたクイーンとともにアメリカ本格派の中核として活躍しました。
本名はW・H・ライトといい、芸術評論家として当初は新聞や文芸雑誌に評論を書いたり、純文学の小説を発表したりしていました。 しかし芸術の分野ではなかなか原稿なども売れなかったらしく、生活苦と将来への不安から1923年、体調を崩して療養生活に入らざるを得なくなります。
そんな時、療養生活の中で医師から軽い読み物として薦められたのが他でもない推理小説だったらしく、療養の傍ら2年間でおよそ2000冊近くのも作品を読破し、更には自らも推理小説を書こうと思い立ったのだと言われています。
そのような経緯を経て1926年に書かれたのが、文芸評論家の自分をモデルとした主人公ファイロ・ヴァンスの活躍する長編「ベンスン殺人事件」で、この作品は発表されるやいなやアメリカ中で大評判となります。そして以後も「グリーン家殺人事件」や「僧正殺人事件」などの質の高い作品を次々と発表していき、推理作家としての地位を固めていきました。
そして「優れた推理長編は生涯6冊以上書けるものではない」と本人自ら主張していた通り、当初は6作品で書くのを止める予定でしたが、周囲の強い要望・説得により更に6編を発表し、全部で12編の長編を残しています。
ライトは芸術評論家としての自分の名声に気遣ってか推理小説の発表の際には本名は使わず”S・S・ヴァン・ダイン”の匿名で作品を発表したのですが、そのため当時のアメリカでは「ヴァン・ダインは誰か?」という話題でももちきりだったそうです。
また1928年には推理小説には恋愛的要素は取り入れるべきではないなどの主張を盛り込んだ「推理作家心得20か条」(ヴァンダインの二十則)を提案して、フェアな謎解きを心がけた作家でもあります。
キャラクター設定とシナリオの一部を担当
No. | 事件名 | 発表年 | DVD | 備考 |
1 | The Clyde Mystery(米) | 1931 | - | 監督:ジョセフ・ヘナベリー 主演:ドナルド・ミーク、ジョン・ハミルトン |
2 | The Cole Case(米) | - | 監督:ジョセフ・ヘナベリー 主演:ドナルド・ミーク、ジョン・ハミルトン |
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3 | The Symphony Murder Mystery(米) | 1932 | - | 監督:ジョセフ・ヘナベリー 主演:ドナルド・ミーク、ジョン・ハミルトン |
4 | The Campus Mystery(米) | - | 監督:ジョセフ・ヘナベリー 主演:ジョン・ハミルトン |
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5 | The Crane Poison Case(米) | - | 監督:ジョセフ・ヘナベリー 主演:ドナルド・ミーク、ジョン・ハミルトン |
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6 | The Week End Mystery(米) | - | 監督:アーサー・ハーレー 主演:ドナルド・ミーク、ジョン・ハミルトン |
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7 | The Wall Street Mystery(米) | - | 監督:ジョセフ・ヘナベリー 主演:ドナルド・ミーク、ジョン・ハミルトン |
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8 | The Studio Murder Mystery(米) | - | 監督:ジョセフ・ヘナベリー 原作:S・S・ヴァン・ダイン 主演:ドナルド・ミーク、ジョン・ハミルトン |
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9 | The Trans-Atlantic Mystery(米) | - | 監督:ジョセフ・ヘナベリー 脚本:バーネット・ハーシー 主演:ドナルド・ミーク、ジョン・ハミルトン |
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10 | The Side Show Mystery(米) | - | 監督:ジョセフ・ヘナベリー 主演:ドナルド・ミーク、ジョン・ハミルトン |
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11 | The Skull Murder Mystery(米) | - | 監督:ジョセフ・ヘナベリー 脚本:バーネット・ハーシー 主演:ドナルド・ミーク、ジョン・ハミルトン |
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12 | Murder in the Pullman(米) | - | 監督:ジョセフ・ヘナベリー 主演:ドナルド・ミーク、ジョン・ハミルトン |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 大統領のミステリ | 1935 | 早川文庫97-1 | フランクリン・D・ルーズベルト米大統領のプロットを元にした作品 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Songs of Youth | 1913 | - | 詩集 |
2 | Europe After 8:15 | 1914 | - | 旅行記、H. L. MenckenとG. J. Nathanとの共著 |
3 | Richard Hovey and His Friends | - | ||
4 | What Nietzsche Thaught (ニーチェの教理) |
1915 | 論創社 論創海外ミステリ67「ファイロ・ヴァンスの犯罪事件簿」('07) 創元推理21('01冬) |
邦訳は序文のみ「ウィラード・ハンティントン・ライトの著作概観と「ニーチェの教え」の中で訳出 |
5 | Modern Painting (現代絵画論) |
- | 文芸論 | |
6 | The Forum Exhibition of Modern American Painters | 1916 | - | 画集 |
7 | The Creative Will (創造的意志) |
- | ||
8 | The Man of Promise (前途ある男) |
- | 自伝風の純文学小説 | |
9 | Misinforming a Nation | 1917 | - | |
10 | Informing a Nation | - | ||
11 | The Future of Painting (絵画の将来) |
1923 | - | 文芸論 |
12 | Modern Literature (現代文学論) |
1926 | - | 文芸論 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Great Modern French Stories | 1917 | - | W・H・ライト名義 |
2 | The Great Detective Stories | 1927 | - | W・H・ライト名義 序文に「推理小説論」 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 探偵小説論 | 1926 | 論創社 論創海外ミステリ67「ファイロ・ヴァンスの犯罪事件簿」('07) | W・H・ライト名義 「推理小説論」の原型 |
2 | 推理小説論 | 1927 | 創元推理文庫103-12「ウィンター殺人事件」 | W・H・ライト名義 |
3 | 推理小説作法の二十則 (探偵小説作法二〇則) (探偵小説作法) |
1928 | 創元推理文庫103-12「ウィンター殺人事件」 成甲書房「ミステリの美学」('03) パシフィカ 名探偵読本4「エラリイ・クイーンとそのライヴァルたち」('79) 探偵小説'32.7(2-7) |
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4 | あとがき | 1935 | 創元推理文庫103-10「誘拐殺人事件」 | S・S・ヴァン・ダインの自伝をあとがきとして収録 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 名探偵読本4 エラリイ・クイーンとそのライヴァルたち | 1979 | パシフィカ('79) | 石川喬司+山口雅也編 日本で独自に編纂 |
2 | Alias S. S. Van Dine 別名S・S・ヴァン・ダイン ファイロ・ヴァンスを創造した男 |
1992 | 国書刊行会('11) | ヴァン・ダインの伝記 ジョン・ラフリー著 |
No. | 事件名 | 発表年 | DVD | 備考 |
1 | The President's Mystery(米) | 1936 | - | 監督:フィル・ローゼン 脚本:レスター・コール、ナセニェル・ウェスト 主演:ヘンリー・ウィルコクスン、ベティ・ファーネス、シドニー・ブラックマー 原作「大統領のミステリ」 |
【参考】「ファイロ・ヴァンスの犯罪事件簿」(論創社 論創海外ミステリ)