ニュージーランド出身でイギリスで活躍した女流本格作家ナイオ・マーシュの32の長編作品全てで探偵役を務める、イギリス・スコットランド・ヤードの犯罪捜査課(CID)の主任警部。なお新潮文庫版ではアレイン警部と表記されています。
1931年のとある日のこと、一日中雨が降っていた土曜の午後、マーシュはロンドンのスローン・スクエアの自室で近くの貸本屋で借りてきたクリスティーかセイヤーズを読み終わって、石炭の炎をぼんやりと眺めながら自分もこのような本が書けないものかなと考えていました。
すると突然着想が湧いてきて、雨の中20ペニーのノートと鉛筆と鉛筆削りを買いに行き、すぐに小説の執筆を始めたのだそうです。
そして5章目に登場する若い独身の警部に名前をつけなくてはならなくなると、その週に訪れたばかりの、彼女の父親の母校であり、レイモンド・チャンドラーも学んだというダリッチ・カレッジの創始者でシェイクスピア役者でもあったエドワード・アレンの姓を借りて付けたといいます。これがアレン警部の名前の由来なのだそうです。
イギリスの上流社会の生まれで、オックスフォード大学を卒業後、最初は外交官としての道を歩んでいましたが、ある理由からその道を棄て、全く違った世界である警察官という仕事に就きます。
彼の捜査方法は「散らばった証拠を拾い集め、全てのものを並べてみて、犯罪の型を決める」というオーソドックスな方法で、部下のフォックス警部や友人の新聞記者のバスケイトらとも連携して地道な捜査活動を続けていき事件を解決に導きます。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | アレン警部登場 | 1934 | 論創社 論創海外ミステリ18('05) | マーシュのデビュー作 |
2 | 殺人者登場 (殺人鬼登場) |
1935 | 新潮文庫('59) 六興出版部 六興推理小説選書101('57) |
新潮文庫版ではアレイン警部 |
3 | 病院殺人事件 | 別冊宝石68('57) | ヘンリー・ジェレット (Henry Jellett)との合作 | |
4 | Death in Ecstasy | 1936 | - | |
5 | ヴィンテージ・マーダー | 1937 | 論創社 論創海外ミステリ28('05) | |
6 | Artists in Crime | 1938 | - | |
7 | Death in a White Tie | - | ||
8 | 死の序曲 | 1939 | HPB476 | |
9 | Death at the Bar | 1940 | - | |
10 | ランプリイ家の殺人 | 国書刊行会 世界探偵小説全集17('96) | ||
11 | Death and the Dancing Footman | 1941 | - | |
12 | Colour Scheme | 1943 | - | |
13 | Died in the Wool | 1945 | - | |
14 | Final Curtain | 1947 | - | |
15 | Swing, Brother, Swing (米 A Wreath for Rivera) |
1949 | - | |
16 | ヴァルカン劇場の夜 | 1951 | HPB337 | |
17 | Sprinsters in Jeopardy (米 The Bride of Death) |
1954 | - | |
18 | Scales of Justice (正義の秤) |
1955 | - | CWA賞シルヴァー・ダガー賞('55) |
19 | 道化の死 | 1956 | 国書刊行会 世界探偵小説全集41('07) | CWA賞シルヴァー・ダガー賞('57) |
20 | Singing in the Shrouds | 1958 | - | |
21 | False Scent | 1960 | - | |
22 | Hand in Glove | 1962 | - | |
23 | Dead Water | 1963 | - | |
24 | Death at the Dolphin (米 Killer Dolphin) |
1966 | - | |
25 | Clutch of Constables 恐怖の風景画 |
1968 | カッパまがじん'77.3(抄訳) | |
26 | When in Rome | 1970 | - | |
27 | Tied Up in Tinsel | 1972 | - | |
28 | Black as He's Painted | 1974 | - | |
29 | Last Ditch | 1977 | - | |
30 | Grave Mistake | 1978 | - | |
31 | Photo-Finish | 1980 | - | |
32 | Light Thickens | 1982 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | The Collected Short Fiction of Ngaio Marsh (英 Peath on the Air and Other Stories) |
1989 | - | ||
1 | 死は電波にのる (ラジオは知っていた) |
1934 | 別冊宝石123('63) HMM'91.12 |
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2 | 出口はわかっている (出口はわかる) |
1946 | 光文社文庫「世界ベスト・ミステリー50選/上」('94) EQMM'56.10 HMM'79.4 |
EQMM短編年間コンテスト3位('46) | |
3 | Chapter and Verse 章と節 |
1973 | HMM'81.10 |
【参考】「ハヤカワ・ミステリ・マガジン1981年10月号」(早川書房)