盲目の名探偵
イギリスの推理小説家アーネスト・ブラマの創造した盲目の名探偵。「ホームズの時代」の最後の名探偵とも言われ、第一次世界大戦前後のイギリス推理小説界に旋風を巻き起こしました。
ちなみに彼の盲目は後天的なもので、ワトソン役のルイス・カーライルに出会う12年前の1902年、ある友人とエクスムアーの森の中で馬を進めていた時、先行する友人の踏みつけた小枝が跳ね返って目に当たり失明してしまいます。
しかし彼はその不幸を強靭な意思で克服し、新たな能力をつかみ取ります。視覚を奪われた代わりに他の感覚が異常に発達し、推理力や判断力もいっそう鋭くなったのでした。その中でも特に指先の敏感さは天下一品で、ペンで書かれた手紙であろうと新聞であろうとインクの跡の凹凸をたどるだけで字を読むことさえできるのです。
そしてそんな彼のこの能力を最大限に活かすのが彼の従僕として仕えるパーキンソンで、彼は記憶術の天才であり、一瞥しただけでその全てを詳細に観察・記憶できる能力を持っています。
彼の元々の名前はマックス・ウィンといいましたが、カラドスと改姓することを条件にアメリカのいとこから財産と姓を相続。それ以後は相続した財産でリッチモンドの〈小塔荘(タレット)〉で優雅な生活を送っていました。
その間古銭を収集したり、偽造紙幣研究の専門家として名を馳せていましたが、友人の元弁護士で私立探偵のカーライルと再会したことがきっかけで犯罪捜査に乗り出すようになり、前述の超人的な能力を駆使して数々の難事件を鮮やかに解いてみせてくれます。
なお第1短編集「Max Carrados」はクイーンの定員にも選ばれています。全部で3冊の短編集と1つの長編が残されています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Bravo of London | 1934 | - | 唯一の長編 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | マックス・カラドスの事件簿 | 1978 | 創元推理文庫180-1 | 全8編 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | Max Carrados (マックス・カラドス) |
1914 | - | クイーンの定員56 | |
1 | ディオニュシオスの銀貨 | 創元推理文庫180-1「マックス・カラドスの事件簿」 | |||
2 | ナイツ・クロス信号事件 | 光文社文庫「クイーンの定員 II」('92) | |||
3 | ブルックベンド荘の悲劇 (真夜中の悲劇) (悲劇の結末) |
創元推理文庫100-2「世界短編傑作集2」('61) HPB251「名探偵登場2」('56) 新青年'34.4特大 |
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4 | ストレイスウェイト卿夫人の奸知 | 創元推理文庫180-1「マックス・カラドスの事件簿」 | |||
5 | The Last Edploit of Harry the Actor | - | |||
6 | The Tilling Shaw Mystery | - | |||
7 | The Comedy at Fountain Cottage 玩具の家の喜劇 |
新青年'38新春増刊 | |||
8 | The Game Played in the Dark 闇試合 (深夜の決勝) |
HMM'74.2 探偵小説'32.8(2-8) |
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2 | The Eyes of Max Carrados | 1923 | - | ||
1 | The Virginiola Fraud | - | |||
2 | The Disappearance of Marie Serere | - | |||
3 | The Secret of Danstan's Tower | - | |||
4 | 毒キノコ | 創元推理文庫180-1「マックス・カラドスの事件簿」 | |||
5 | マッシンガム荘の幽霊 | ||||
6 | The Missing Actress Sensation | - | |||
7 | The Ingenious Mr. Spinola | - | |||
8 | The Kingsmouth Spy Case | - | |||
9 | The Eastern Mystery | - | |||
3 | The Specimen Case | 1924 | - | 全21編 | |
1 | The Bunch of Violets スミレの花 |
HMM'86.6 | |||
4 | Max Carrdos Mysteries | 1927 | - | ||
1 | へドラム高地の秘密 | 創元推理文庫180-1「マックス・カラドスの事件簿」 | |||
2 | The Mystery of the Vanished Petition Crown 請願銀貨紛失事件 |
HMM'70.7 | |||
3 | フラットの惨劇 (アパートの殺人) |
創元推理文庫180-1「マックス・カラドスの事件簿」 探偵小説'32.4(2-4) |
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4 | 靴と銀器 (二つの左靴) |
創元推理文庫180-1「マックス・カラドスの事件簿」 別冊宝石73('58) |
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5 | The Ingenious Mind of Mr. Rigby Lacksome | - | |||
6 | カルヴァー・ストリートの犯罪 | 創元推理文庫180-1「マックス・カラドスの事件簿」 | |||
7 | The Strange Case of Cyril Bycourt | - | |||
8 | The Missing Witness Sensation | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Best Max Carrados Detective Stories | 1972 | - |