社会派文学の旗手とも称される女流作家

JPN 高村薫
(Kaoru Takamura)

リヴィエラを撃てicon
「リヴィエラを撃て」
(1992年)
(新潮社)

 日本の女流作家で、数々の文学賞等の受賞歴を持つ実力派の作家です。

 大阪に生まれ、大学を卒業後商社勤務を経てマンション経営のかたわら執筆活動を始めす。1989年に第2回日本推理サスペンス大賞に、幸田精名義で応募した「リヴィエラを撃て」が最終候補に残り、翌90年には「黄金を抱いて翔べ」で第3回の同賞を受賞し、作家デビューを果たします。

 当初から犯罪小説と同時に高い文学性を持ち、翌1992年に第2長編「神の火」が第5回山本周五郎賞の候補作に選ばれると、同年刊行された「リヴィエラを撃て」が大反響を巻き起こし同年の第11回日本冒険小説協会大賞と翌93年の第46回日本推理作家協会賞の長編部門賞を受賞した他、93年の第6回山本周五郎賞の候補作に選ばれるなど作家としての地位を確固たるものとします。

 また92年には短編「アルコホリック・ホテル」で第45回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門の候補となったほか、大阪文化の振興を目指すために創設された咲くやこの花賞も受賞しています。

マークスの山icon
「マークスの山」
(1993年)
(講談社)

 1993年からは合田雄一郎刑事の登場する三部作を発表。最初の「マークスの山」はベストセラーとなり映画化もされただけでなく、第109回直木賞と第12回日本冒険小説協会大賞も受賞し、氏の代表作に挙げる人も多い傑作です。そして1997年発表の三部作最後の作品「レディ・ジョーカー」も大きな反響を集め、毎日出版文化賞も受賞したほか、2004年には映画化もなされています。

 壮大な設定でじっくりと作品を造り上げていくタイプで、また完璧主義者的な面もあり単行本を文庫化するにあたり大幅な改作を行うことも多いため作品数は決して多くはありませんが、大胆かつ骨太な文体と社会性の高いテーマを細部にわたって正確に描写する筆の確かさ、そして登場人物たちの人間関係を描写する際の豊かな表現力は他を圧倒するものがあり、数々の賞を獲得しているのも頷けます。

 作家活動以外では新聞などにコメンテーターとして登場することも多く、毎日新聞のサイト”毎日jp”には「高村薫さんと考える」というコーナーも設けられていて、様々な社会問題や政治問題についての氏の考えや見解をうかがい知ることもできます。


■作家ファイル■

本名
林みどり
出身地
大阪府大阪市東住吉区
学歴
国際基督教大学(ICU)教養学部卒業(フランス文学を専攻)
生没
1953年2月6日〜
作家としての経歴
1989
幸田精名義で応募した長編「リヴィエラを撃て」の原型が第2回日本推理サスペンス大賞の最終候補作に
1990
長編「黄金を抱いて翔べ」で第3回日本推理サスペンス大賞を受賞し、作家デビューを果たす
1991
第2長編「神の火」を刊行し、翌92年の第5回山本周五郎賞の候補作となる
1992
「リヴィエラを撃て」が第4長編として刊行され、同年の第11回日本冒険小説協会大賞と翌93年の第46回日本推理作家協会賞の長編部門賞を受賞。また93年の第6回山本周五郎賞の候補作にも選ばれる
1992
短編「アルコホリック・ホテル」で第45回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門の候補作となる
1992
大阪文化の振興を目指すために創設された咲くやこの花賞を受賞
1993
合田雄一郎刑事の登場する長編「マークスの山」で第109回直木賞および第12回日本冒険小説協会大賞を受賞
1993
短編「ステーション・パーラー」で第46回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門候補となる
1993
第3長編「わが手に拳銃を」(のちこの作品を下敷きにして「李歐」を書く)が第14回吉川英治文学新人賞の候補作となる
1997
長編「レディ・ジョーカー」を発表し、翌98年の毎日出版文化賞を受賞
2006
長編「新リア王」で第4回親鸞賞を受賞
シリーズ探偵
合田雄一郎刑事
福澤彰之
代表作
「リヴィエラを撃て」
「マークスの山」「レディ・ジョーカー」
「新リア王」

■関連リンク■

1 高村薫さんと考える─毎日jp(毎日新聞)


■著作リスト■

1 合田雄一郎刑事登場作品リスト

2 福澤彰之登場作品リスト

No. 事件名 発表年 出版 備考
1 晴子情歌 2002 新潮社(上下)
2 新リア王 2005 新潮社(上下) 第4回親鸞賞('06)
3 太陽を曳く馬 2009 新潮社(上下) 合田雄一郎との共演

3 モグラシリーズ作品リスト

【短編】

No. 事件名 発表年 出版 備考
1 モグラ 1994 小説現代'94.6
2 村は踊った 小説現代'94.8
3 奏でる女、踊る男 小説現代'94.10 映画化「Mogura」('96)
4 冬の役者たち 小説現代'94.12

【映画】

No. 事件名 発表年 DVD 備考
1 Mogura 1996 - 主演・渡辺真起子、杉本哲太
監督・梅林茂

4 ヨゼフ断章シリーズ作品リスト

No. 事件名 発表年 出版 備考
1 黙せる村 1994   オール讀物'94.5
2 天翔る花火・ヨゼフ十六歳 オール讀物'94.7
3 蟹・ヨゼフ二十六歳 オール讀物'94.9
4 光る闇・ヨゼフ三十六歳 オール讀物'94.11
5 佇む人びと・ヨゼフ四十六歳 1995 オール讀物'95.1
6 凧・ヨゼフ断章 オール讀物'95.3

3 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 出版 備考
1 黄金を抱いて翔べ 1990 新潮文庫('94)
新潮社
デビュー作
第3回日本推理サスペンス大賞
2 神の火 1991 新潮文庫(上下)('95)(全面改稿)
新潮社(文庫版による)('96)
新潮社
第5回山本周五郎賞候補作('92)
3 わが手に拳銃を 1992 講談社 第14回吉川英治文学新人賞候補作('93)
4 リヴィエラを撃て 新潮文庫(上下)('97)
新潮社
第2回日本推理サスペンス大賞最終候補作で最初に書かれた作品
第11回日本冒険小説協会大賞
第46回日本推理作家協会賞長編部門賞('93)
第6回山本周五郎賞候補作('93)
5 李歐 1999 講談社文庫 わが手に拳銃を」を下敷きとして書かれた作品
WOWWOWにてドラマ化('01)

【短編集】

No. 事件名 発表年 出版 備考
1 地を這う虫 1993 文春文庫('99)(全面改稿)
文藝春秋
文庫版は1,3,4,2の順
1 愁訴の花
2 地を這う虫 角川書店「女性作家シリーズ20」('97)
3 巡り逢う人びと
4 父が来た道
5 去りゆく日に 文庫版未収録

【短編】

No. 事件名 発表年 出版 備考
1 ドッグズ・デイズ 広済堂出版「日本ミステリーの一世紀/下」('95)
2 アルコホリック・ホテル 1992 徳間文庫「誘惑―女流ミステリー傑作選」('99)
講談社文庫「あの人の殺意―ミステリー傑作選29」('95)
第45回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門候補作
3 棕櫚とトカゲ 講談社文庫「二十四粒の宝石」('98)
角川書店「女性作家シリーズ20」('97)
講談社「二十四粒の宝石」('95)
4 ステーション・パーラー 1993 講談社文庫「死導者がいっぱい―ミステリー傑作選31」('96) 第46回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門候補作
5 日吉町クラブ 角川ノベルズ「誇りたかき掟 冒険・ハードボイルド傑作選」('96)
6 犬の話 角川書店「女性作家シリーズ20」('97)
7 みかん 文藝春秋「推理作家になりたくて マイベストミステリー3 『迷』」('03)
角川書店「女性作家シリーズ20」('97)

【エッセイ・評論その他】

No. 事件名 発表年 出版 備考
1 なにわ金融事件簿
 闇に蠢く懲りない面々
1997 かもがわ出版 朝日新聞大阪本社経済部と共著
2 快楽と救済 1998 日本放送出版協会 梁石日との対談集
3 半眼訥訥 2000 文春文庫('03)
文藝春秋
4 いやな時代こそ想像力を 岩波書店 岩波ブックレット 佐高信との対談
5 作家的時評集 2000-2007 2007 朝日文庫 時事発言集
6 作家と新聞記者の対話
─2006-2009
2010 毎日新聞社 藤原健との共著
7 閑人生生
─平成雑記帳2007-2009
朝日文庫

【研究書】

No. 事件名 発表年 出版 備考
1 高村薫の世界
―あるいは虚無の深奥への招待
2002 情報センター出版局 野崎六助著
高村薫論
2 高村薫の本
 高村薫が自作を語りつくす!
2004 宝島社文庫('06)
宝島社 別冊宝島
別冊宝島編集部編

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