浅見光彦
(Mitsuhiko Asami)

　旅情ミステリーの大家、内田康夫の生み出した素人探偵。職業はフリーのルポライターで33歳独身、長身でハンサムなのですが、既に他界した大蔵省官僚の父親を含め明治維新以来４代続く高級官僚の家柄に生まれ、警察のトップである警察庁の刑事局長を務める兄陽一郎の屋敷に「早く身を固めなさい」といつもうるさい母雪江と兄嫁親子、それにいつも光彦のことを「坊ちゃま」と呼ぶお手伝いの須美子さんとともに住んでおり、普段は居候の身分で結構肩身の狭い思いをしています。

　大学を卒業の後出版社や商事会社に勤務するもうまくいかず、軽井沢に棲む推理作家の内田康夫の紹介でライターとなり、雑誌〈旅と歴史〉などをメインに紀行文やルポを執筆しています。

　180センチ近い身長に鳶色の瞳の、そしていつもブルゾン姿の爽やかな好青年で、ブルゾン姿で愛車ソアラを運転して赴いた取材地で事件に巻き込まれたり、あるいは取材という名目を借りて自ら事件に首を突っ込んだりすることもあります。

　探偵としては刑事局長である兄も一目置いているほどの推理力を持っていますが、いつも積極的に捜査に口を出すため地元の警察から犯人扱い…。

　ところがいざ身元を調べてみると何と彼の兄は…、途端に刑事の態度が豹変し、好意的になるというのがこのシリーズのお決まりのパターンで、まるで水戸黄門の印籠を彷彿とさせるこのシーンを見るだけでも楽しいシリーズです。

　また作中では原作者の内田康夫氏が浅見探偵から事件の話を聞いてそれを題材に推理小説を書いているという描写もしばしばあって、ちゃっかり原作者自らを登場させるあたりにも遊び心を感じるといいますか、このシリーズの面白味があるところです。

　この点については一部の読者からは不謹慎だとお叱りを受ける事もあるそうですが（笑）、まあいいのではないでしょうか。

　2006年には長編「棄霊島」でシリーズ通算100作目も突破しました。