警察小説の先駆者
アメリカの推理小説家で、ローレンス・トリートと並ぶ警察小説の代表的作家。大学在学中は新聞の編集をしたり漫画を描いていたといいます。
1942年、大学卒業と同時に第二次世界大戦のため海軍に入隊しますが、1947年に除隊すると、故郷のニュー・へヴンに戻って漫画を描いていましたがこれらは一向に売れなかったそうです。
そして漫画や短編小説の執筆のかたわらに書き上げたシェリダン・ウェズリーを主人公とする長編「奥方は今夜夕食なし」が幸運にもカウォード・マッカン社に売れたために作家としてデビューを果たすことになります。
1951年には結婚し、以後は地元の高校の教師や週刊新聞〈ブランフォード・レヴュー〉の編集などの仕事をこなしながら1980年代まで約年1冊のペースで作品を発表しました。
彼の名声を決定付けたのは1952年に発表したノン・シリーズ長編「失踪当時の服装は」で、この作品は警察の地道で忍耐強い捜査活動を克明に描きあげたいわゆる警察小説で、このジャンルの代表的傑作として歴史に名を残しました。
ウォーは結婚ののちニューヨークに移住しますが、ニューヨークではマンハッタンのイーストサイドのどの殺人課にも顔が利くほど事情に通じていたらしく、そういった面が警察の捜査活動の描写にも活かされていると言えるかもしれません。
以後も主にこの警察小説の分野を中心にして作品を発表していきますが、時には本格推理ものやゴシックロマンなど、幅広いジャンルの作品にも挑戦しています。
またシリーズ・キャラクターも何人かいますが、最も書かれたのがフレッド・C・フェローズ警察署長を主人公とするシリーズで、警察の捜査活動を丹念に描いた警察小説であると同時に謎解きの要素もふんだんに取り入れた本格推理ものでもあり、その中でも「事件当夜は雨」や「冷えきった週末」などが代表的傑作に数え挙げられています。
他にも殺人班刑事フランク・セッションズや元警官の私立探偵サイモン・ケイなどのシリーズなどがあり、サイモン・ケイのシリーズは邦訳もいくつかなされています。
現代のアメリカ・ミステリ界の重鎮として1972年にはアメリカ探偵作家クラブ(MWA)の会長も務め、1981年にはスウェーデン犯罪作家アカデミーからグランドマスター賞を、1989年にはアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞の巨匠賞を受賞しています。
勁文社倒産につき全て絶版となっています
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 麻薬密売人殺し | 1980 | ケイブンシャ文庫111(85) | |
2 | 十年目の対決 | 1981 | ケイブンシャ文庫151('86) | |
3 | The Billy Cantrell Case (ビリー・キャントレル事件) |
- | ||
4 | トップレス・バーの女 | 1983 | ケイブンシャ文庫62('85) | |
5 | パークサイドの殺人 | 1984 | ケイブンシャ文庫88('85) | |
6 | The Priscilla Copperwaite Case | 1988 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | "30" Manhattan East | 1968 | - | |
2 | The Young Prey | 1969 | - | |
3 | Finish Me Off | 1970 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Madam Will Not Dine Tonight (If I Live to Dine) (奥方は今夜は夕食なし) |
1947 | - | シェリダン・ウェズリー ウォーのデビュー作 |
2 | Hope to Die | 1948 | - | シェリダン・ウェズリー |
3 | The Odds Run Out | 1949 | - | シェリダン・ウェズリー |
4 | 失踪当時の服装は | 1952 | 創元推理文庫152-1 | |
5 | 愚か者の祈り (襤褸の中の髪と骨) |
1954 | 創元推理文庫152-6 日本文芸社 世界秘密文庫('66) |
日本文芸社版はR・ファンテーヌ作・陶山密訳 |
6 | Rich Man, Dead Man (英 Rich Man, Murder) (Case of the Brunette Bombshell) |
1956 | - | |
7 | The Eighth Mrs. Bluebeard (青髭八人目の妻) |
1958 | - | |
8 | The Girl Who Cried Woolf | - | ||
9 | Murder on the Terrace | 1961 | - | |
10 | Girl on the Run | 1965 | - | |
11 | Run When I Say Go | 1969 | - | |
12 | The Shadow Guest | 1971 | - | ゴシックロマン |
13 | Parrish for the Defence (Doctor on Trial) |
1974 | - | |
14 | A Bride for Hampton House | 1976 | - | ゴシックロマン |
15 | 待ちうける影 | 1978 | 創元推理文庫152-5 | |
16 | Murder on Safari | 1987 | - | |
17 | この町の誰かが | 1988 | 創元推理文庫152-2 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Duplicate | 1964 | - | |
2 | The Triumvirate | 1966 | - | |
3 | The Trouble with Tycoons (英 The Missing Tycoons) |
1967 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Seaview Manor | 1976 | - | ゴシックロマン |
2 | The Summer At Raven's Roost | - | ||
3 | The Secret Room of Morgate House | 1977 | - | |
4 | Blackbourne Hall | 1979 | - | |
5 | Rivergate House | 1980 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Case of the Missing Gardener | 1954 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Hillary Waugh's Guide to Mysteries and Mystery Writing | 1991 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 女心 | 1969 | 早川文庫80-3「眠れぬ夜の愉しみ アメリカ探偵作家クラブ傑作選3」('82) | |
2 | わめく若者たち | 1970 | 早川文庫80-11「犯罪こそわが人生 アメリカ探偵作家クラブ傑作選9」('85) HMM'80.4 |
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3 | お訊きしたいこと | 1983 | 光文社文庫「英米超短編ミステリー50選」('96) EQ'83.7(34) |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Merchant of Menace | 1969 | - | アンソロジー |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | わたしはアウトラインをつくらない | 講談社文庫「ミステリーの書き方」('98) 講談社「ミステリーの書き方」('84) |
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2 | シリーズ物と単発物 |
【参考】「この町の誰かが」(東京創元社 創元推理文庫)
「失踪当時の服装は」(東京創元社 創元推理文庫)