空前のトリックで人気を集める鬼才
フランスの作家、脚本家、翻訳家。小説だけでなく数多くの映画作品にも携わり、オリジナルも含めて映画脚本も数作品手掛けています。
フランスのマルセイユに生まれ、生まれ故郷のイエズス会系の学校に通っていた16歳の時に書いた純文学作品「不幸な出発」で18歳にして作家デビュー。
少年と年上の尼僧との禁断の恋が描かれたこの作品は、タイム誌から”10代のフロベール”と称賛され、1975年には「続・個人教授」のタイトルで映画化もされるなど大変な好評を博しました。
その後しばらくは広告代理店に勤務し、J・D・サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」やJ・T・ストーリーの「ハリーの災難」の翻訳を手掛けるなど翻訳家として活躍。
ところが1962年に経済的事情から推理小説家に転身することとなり、借金の支払のために2つのミステリ長編をわずか1ヵ月で書き上げたことがきっかけで、その才能が一気に開花します。
その2つの長編のうち、まずデビュー作となった「寝台車の殺人者」は、ボアロー&ナルスジャックの一人でフランスミステリ界の巨匠のピエール・ボアローから”輝かしきデビュー作”と称賛されました。
次いでその5か月後に第2長編「シンデレラの罠」を刊行しますが、一人四役という前代未聞のプロットで当初から注目を集め、発売の48時間後にはラ・ソシエテ・ゴーモン社により映画化権が買い取られ、日本を皮切りにたちまち13カ国で版権が売られるほどの爆発的な反響を巻き起こします。
そしてフランス推理小説大賞も受賞するなど、この「シンデレラの罠」によりジャプリゾは名実ともにミステリ史にその名を刻み込んだのでした。
この2つの作品で人気作家としての地位を不動のものとしたジャプリゾですが、その後も作品数は決して多くはないものの新作の発表の度に話題を集め、その作品のほとんどが映画化されています。
また本国フランスだけでなく日本をはじめ国外でも大変な人気を集めています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 寝台車の殺人者 | 1962 | 創元推理文庫142-2 | 映画化('65) |
2 | シンデレラの罠 | 創元推理文庫142-6(新訳版) 創元推理文庫142-1 |
フランス推理小説大賞 映画化('65) |
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3 | 新車の中の女 | 1966 | 創元推理文庫142-3 | 「殺意の週末」のタイトルで映画化('71) |
4 | 殺意の夏 | 1977 | 創元推理文庫142-4 | ドゥー・マゴ賞 映画化('83) |
5 | La passion de femmes | 1986 | - | |
6 | 長い日曜日 | 1991 | 創元推理文庫142-5 東京創元社 海外文学セレクション('94) |
アンテラリエ賞 「ロング・エンゲージメント」のタイトルで映画化('04) |
7 | Là-haut les tambours | - | 未完 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 不幸な出発 | 1950 | 六興出版社('52) | 邦訳はジャン・ロッシイ名義 「続・個人教授」のタイトルで映画化、ユナニミテ賞 |
2 | Visages de l'amour et de la haine | 1951 | - | |
3 | L'Odysexe | 1965 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Adieu l'ami さらば友よ |
1968 | HPB1074 | アラン・ドロンとチャールズ・ブロンソンの共演映画のために書き下ろされた作品 |
2 | Le Passager de la pluie (雨の訪問者) |
1970 | - | |
3 | ウサギは野を駆ける | 1972 | HPB1215 早川書房 世界ミステリ全集15('73) |
「狼は天使の匂い」のタイトルで映画化 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Piège pour Cendrillon シンデレラの罠 |
1965 | - | |
2 | Les mal partis 不幸な出発 (続・個人教授) |
1975 | - | |
3 | L'été meurtrier 殺意の夏 |
1983 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | O嬢の物語 | 1975 | - | ポリーヌ・レアージュ原作 |
2 | Folle a tuer (狼が来た、城へ逃げろ) |
- | ジャン・パトリック・マンシェット原作 | |
3 | Les Enfants du marais クリクリのいた夏 |
1999 | - | ジョルジュ・モンフォレ原作「沼地の子供たち」 |
【参考】「長い日曜日」(東京創元社 創元推理文庫)