「私」が日常生活で出会う謎を鮮やかに解決
北村薫の生み出したキャラクターで、著者のデビュー作となった連作短編集「空飛ぶ馬」などに登場。職業は落語家。
中学生の時に聞いた三代目春桜亭円紫の芸に感動して高校生の時に入門。その後大学にも進学し、文学部で落語と両立させつつ勉学にも励みますが、この際抜群の記憶力と奇抜な発想で教授を驚かせたといいます。
落語の方は入門直後から頭角を表し、在学中に出世名前の「小紫」の名前を貰うなど、若くして評価され師匠からも特別に愛されていましたが、その師匠である三代目が急逝してしまったことで、円紫の名を継ぐことになります。そしてこの際1つ飛ばして5代目を襲名しました。
初登場時は40歳前後で、既婚で妻と幼い娘との三人暮らし。その芸風は温かく観客に心地よささえ感じさせるものがあり。また古典落語に独自の演出を施すことも多いといいます。
その風貌は細面の内裏雛を近代的にしたような童顔で、色白でやさしい眉が良く似合う顔立ち、性格は温厚で柔らかく細やかな感性の持ち主です。
大学のOBで近世日本文学の加茂芳彦教授の教え子という共通点から主人公で女子大生の「私」と知り合い、作中では彼女が日常生活の中で出会った不思議な謎を鮮やかに解き明かしていく役割を務めます。
「私」にとって円紫師匠は人間が成長していく中で出会う謎を鮮やかに解き明かしてくれる、そしてかつて自分がたどってきたであろう道を健気に進もうとしている後輩の「私」を温かい目で見守ってくれる、何にも替え難い貴重な存在といえるでしょう。
No. | 事件名 | 発表年 | 出版 | 備考 | |
1 | 空飛ぶ馬 | 1989 | 創元推理文庫413-1 東京創元社 |
北村薫のデビュー作 | |
1 | 織部の霊 | ||||
2 | 砂糖合戦 | ||||
3 | 胡桃の中の鳥 | ||||
4 | 赤頭巾 | ||||
5 | 空飛ぶ馬 | ||||
2 | 夜の蝉 | 1990 | 創元推理文庫413-2 双葉文庫 日本推理作家協会賞受賞作全集65('05) 東京創元社 |
第44回日本推理作家協会賞 | |
1 | 朧夜の底 | ||||
2 | 六月の花嫁 | ||||
3 | 夜の蝉 | ||||
3 | 秋の花 | 1991 | 創元推理文庫413-3 東京創元社 |
初の長編 | |
4 | 六の宮の姫君 | 1992 | 創元推理文庫413-4 東京創元社 |
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5 | 朝霧 | 1998 | 創元推理文庫413-5 東京創元社 |
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1 | 山眠る | 1995 | |||
2 | 走り来るもの | 1996 | |||
3 | 朝霧 | 1997 |
【参考】「静かなる謎 北村薫」(宝島社 別冊宝島1023)