”老いぼれ犬”と呼ばれる警視庁きってのハードボイルド探偵

JPN 高樹良文警部
(Yoshibumi Takagi)

眠りなき夜icon
「眠りなき夜」
(1982年)
(集英社)

 北方謙三の生み出したハードボイルドな警察官探偵。警視庁捜査一課警部で、19世紀半ばのアメリカを代表する音楽家スティーブン・コリンズ・フォスターの「老犬トレー」を鼻唄で口ずさむ癖があることから”老いぼれ犬”とあだ名されています。

 初登場の「眠りなき夜」(82)の時には小柄でやせた体つき、鋭い目つきをしていて年齢は40代なものの白髪のせいか10歳は老けて見え、火つきの悪い旧式のオイルライターでゴロワーズをくゆらす姿が描かれていました。そして「檻」(83)以後はそれに片足を引きずる癖も加わっています。

 警視庁の刑事ではあるものの警察組織とは距離を置く一匹狼で、その捜査方法は完全な独断専行型。事件解決のためには手段を選ばず、時に味方を罠にはめることもあります。また凶暴な犯人と対峙した時には右手に握られた手錠で相手の手を打ち得物を払い落すという、手錠を武器にした独特の逮捕術を披露してくれます。

 当初は脇役として物語に登場し、主人公たちの隠された秘密を老獪に見通しはするものの、自身の内側に秘められた獣性がそうさせるのか、彼らが暴走するのをあえて阻止しようとしない渇いた一面を見せていましたが、1989年の「傷痕」で戦後間もない1946年の日本を舞台に焼け跡を生き抜く13歳の少年として初めて主人公で作品に登場しました。その後続く「風葬」(89)と「望郷」(90)でも主人公を務めた後、退場しています。


■原作■

北方謙三
(Kenzo Kitakata 日 1947- )


■人物ファイル■

職業
警視庁捜査一課警部
あだ名
老いぼれ犬(スティーブン・フォスターの”老犬トレー”のメロディーをよく口ずさんでいることから)
好きなもの
タバコ(ゴロワーズ)
愛用品
火つきの悪い旧式のオイルライター
事件簿
8長編+”挑戦”シリーズ5長編の計13長編で脇役として登場
”老犬”シリーズ三部作で主役として登場
全部で16長編に登場している

■関連リンク■

1 ウィキペディア スティーブン・フォスターのページ


■事件ファイル■

【長編】

No. 事件名 発表年 出版 備考
1 眠りなき夜 1982 集英社文庫('86)
集英社
第1回日本冒険小説協会大賞日本軍大賞
第4回吉川英治文学新人賞
弁護士・谷道雄が主人公
2 1983 集英社文庫('87)
集英社
第2回日本冒険小説協会大賞日本軍大賞
3 逢うには、遠すぎる 光文社文庫('04)
集英社文庫('86)
集英社
4 渇きの街 1984 双葉文庫('99)
集英社文庫('88)
集英社
第38回日本推理作家協会賞
映画化('97)
5 危険な夏
 挑戦シリーズ1
1985 集英社文庫('90)
集英社
6 冬の狼
 挑戦シリーズ2
集英社文庫('90)
集英社
7 ふるえる爪 1986 光文社文庫('05)
集英社文庫('89)
集英社
8 夜が傷つけた 講談社文庫('10)
集英社文庫('90)
集英社
弁護士・谷道雄が主人公
9 集英社文庫('89)
小学館
10 愚者の街 1987 徳間文庫('03)
集英社文庫('91)
集英社
11 風の聖衣
 挑戦シリーズ3
集英社文庫('90)
集英社
12 風群の荒野
 挑戦シリーズ4
1988 集英社文庫('90)
集英社
13 いつか友よ
 挑戦シリーズ5
集英社文庫('90)
集英社
14 傷痕
 老犬シリーズ1
1989 集英社文庫('92)
集英社
15 風葬
 老犬シリーズ2
集英社文庫('92)
集英社
16 望郷
 老犬シリーズ3
1990 集英社文庫('92)
集英社

【映画】

No. 事件名 発表年 DVD 備考
1 渇きの街 1997 ジーダス('05) 主演・袴田吉彦、黒谷友香、寺田農(高樹刑事)
監督・榎戸耕史

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