カット・バック手法の名手
アメリカのミステリー作家・脚本家。 アイオワ州に生まれ、大学を卒業後職業や住居を転々としながら雑誌への投稿をするようになり、後にラジオやテレビドラマの脚本や映画台本も書くようになりますが、その数は200以上にものぼるといいます。
そして1948年になると、シカゴの私立探偵バー・ブリードを主人公とするハードボイルドの作品を2本発表し、ミステリの世界にもデビューします。
彼がミステリ作家として注目を集めるようになったのは、1950年に発表した長編「煙で描いた肖像画」によってでした。
この作品は映画などでよく用いられるカット・バックと呼ばれる手法、即ち一見無関係な二つの話を並行して描写しながら最後に二つの話を意外な形で結びつけて解決に至らせるというやり方を用いています。
彼はこの後この手法を多用し、「歯と爪」「消された時間」などの長編を書き上げますが、これらの作品はサスペンス小説の古典的傑作として今日も高く評価され続けています。
そして「歯と爪」「消された時間」には作者自身もよほどの自信があったらしく、結末部分に封をし、その表面に「これから先を読む気がしない読者は封を切らずに出版社に持参すれば代金を返却します」という、返金保証のシステムを用いたといいます(創元推理文庫の「歯と爪」にも同様の封がしてあります)。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Body in the Bed (ベッドのなかの死体) |
1948 | - | ハードボイルド小説 |
2 | The Body Beautiful (美しい死体) |
1949 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Spy in Bangkok | 1965 | - | スパイ小説 |
2 | The Spy in the Jungle | - | ||
3 | The Spy at Angkor Wat | 1966 | - | |
4 | The Spy in the Java Sea | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 煙で描いた肖像画 (煙の中の肖像) |
1950 | 創元推理文庫163-3 小学館 クラシック・クライム・コレクション('02) |
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2 | The Darkening Door (暗くなる扉) |
1952 | - | 麻薬小説 |
3 | 美しき罠 | 1953 | HPB1791 | |
4 | The Black, Black Hearse (The Case of the Black Black Hearse) |
1955 | - | フレデリック・フレイア名義 |
5 | 歯と爪 | 創元推理文庫163-4(新版) 創元推理文庫163-2 東京創元社 クライム・クラブ26('59) |
EQアンケート92位 | |
6 | 消された時間 | 1957 | 早川文庫59-1 HPB467 |
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7 | 赤毛の男の妻 | 創元推理文庫163-1 東京創元社 クライム・クラブ1('58) |
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8 | Beacon in the Night | 1958 | - | |
9 | Formula for Murder | - | ||
10 | The Doom-Maker (The Blonde on Borrowed Time) |
1960 | - | B・X・サンボーン名義 |
11 | The Fourth of Forever | 1963 | - | |
12 | The Chinese Mask | 1965 | - | |
13 | Not I, Said the Vixen | - | ||
14 | The Heir-Hunters | 1966 | - | |
15 | The Source of Fear | 1968 | - | |
16 | The 49 Days of Death | 1969 | - | |
17 | Heist Me Higher | - | ||
18 | 歪められた男 | 論創社 論創海外ミステリ23('05) | ||
19 | The Corsican | 1974 | - | |
20 | The Law | 1975 | - | 同名テレビムービー('74)のノベライズ |
【参考】「煙で描いた肖像画」(東京創元社 創元推理文庫)