独特の都会的センスを持ったユーモア本格女流作家
アメリカの女流ミステリー作家で、独特の都会的センスを持ち、ドーヴァー主任警部シリーズで有名なイギリスの女流本格作家ジョイス・ポーターと並び称されるユーモア本格の代表的作家です。
この点自身の新聞記者・ラジオ脚本家・プロデューサーなどの豊富な職業経験を活かし、クレイグ・ライス名義をはじめとするたくさんの名義を用いて数多くの作品を残しています。 また1946年にはミステリー作家としては初めて〈タイム〉誌の表紙を飾ったことでも知られています。
イリノイ州のシカゴに生まれますが、幼少時代を専ら父方の叔母や叔父夫妻に預けられて育ち、10代後半から早くもジャーナリストとして活躍をはじめ、20代初めにはすでにラジオの放送作家・プロデューサーになっていたそうです。
ミステリ作家としてのデビューは1939年発表のJ・Jマローン弁護士もの長編第1作「時計は三時に止まる」で、これ以降マローン弁護士とジェイク&ヘレンの3人のドタバタをユーモアたっぷりに描いた本格シリーズを発表して人気を集めました。
またノン・シリーズではありますが、自身とその子供たちをモデルに書き上げたと言われる、アメリカの普通の家庭に起きた殺人事件をユーモアたっぷり描いた長編「スイート・ホーム殺人事件」は、謎解きに加えてほのぼのとして温かみのある語り口が好評で、ライスの一番の代表作として挙げられることの多い作品です。
他にも写真屋のビンゴと抜群の記憶力の持ち主ハンサムが活躍するシリーズや、ジプシー・ローズ・リー名義やマイケル・ヴェニング名義での長編、更にはアメリカ黄金時代を代表する本格作家スチュアート・バーマーと合作した短編集も1冊発表しています。
しかし、度重なる離婚や仕事のストレスからアルコール依存症になり、それが原因で49歳の若さでこの世を去りました。
ライスの作品は本国アメリカでは長い間非常に入手困難だったそうですが、日本では彼女の人気も高く、長編は多くの作品が比較的入手もしやすい方であり、喜ばしい限りです。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | セントラル・パーク事件 | 1942 | 早川文庫28-8 HPB332 |
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2 | 七面鳥殺人事件 | 1943 | HPB480 | |
3 | エイプリル・ロビン殺人事件 | 1958 | HPB524 | 未完 エド・マクベインが補筆 |
すべてジプシー・ローズ・リー名義
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Gストリング殺人事件 | 1941 | 汎書房('50) 別冊宝石116('63) |
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2 | ママ、死体を発見す | 1942 | 論創社 論創海外ミステリ48('06) | 邦訳はクレイグ・ライス名義 |
すべてマイケル・ヴェニング名義
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 眠りをむさぼりすぎた男 | 1942 | 国書刊行会 世界探偵小説全集10('95) | 邦訳はクレイグ・ライス名義 |
2 | もう一人のぼくの殺人 | 1943 | 原書房 ヴィンテージ・ミステリー・シリーズ('00) | 邦訳はクレイグ・ライス名義 |
3 | Jethro Hammer | 1944 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | Murder, Mystery and Malone | 2002 | - | マローンもの10編他 全12編 |
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1 | How Now, Ophelia どうしたオフィーリアよ (何とした、オフィリア) |
1947 | HMM'91.5 別冊宝石81('58) |
マイケル・ヴェニング名義 | |
2 | Death in the Moonlight 月明かりの死 |
1953 | HMM'96.7 | マイケル・ヴェニング名義 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Telefair (Yesterday's Murder) |
1942 | - | |
2 | To Catch a Thief | 1943 | - | ダフネ・サンダース名義 |
3 | スイート・ホーム殺人事件 (甘美なる殺人) |
1944 | 早川文庫28-9(新訳版) 早川文庫28-1 HPB335 宝石'50.6 |
カーステアズ三姉弟 ハヤカワベスト100・15位 EQアンケート28位 |
4 | Crime on My Hands | - | ジョージ・サンダース名義 クリーヴ・カートミルとの合作 |
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5 | 居合わせた女 | 1949 | HPB618 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Murderers | 1952 | - | 犯罪実話集 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Quiet Day in the Country Jail 静かな田舎警察の一日 |
1953 | マンハント'60.4 | |
2 | The Last Man Alive 最後に生き残った男 |
HMM'86.3 | ||
3 | The Murdered Magdalen ある女の死 |
HMM'96.12 | ||
4 | 三人の殺人者 | 別冊宝石126('64) | 犯罪実話 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Murder Makes Merry 殺人は笑える (殺人って楽しいわよ) |
成甲書房「ミステリの美学」('03) HMM'69.10 |
エッセイ |