USA ミニョン・G・エバハート
(Mignon Good Eberhart)

暗い階段
「暗い階段」
(1931年)
(六興出版部)

 サスペンスにおける”H・I・B・K”派の代表的な一人にも挙げられる、アメリカの女性推理小説家。

 最初に結婚した土木技師の夫の仕事のために各地を転々とすることを余儀なくされ、その徒然を紛らわすためにミステリーを書き始めたのが始まりだったといいます。
  そして1929年に未婚の中年看護婦セアラ・キートと若い警察官ランス・オリアリーのコンビが、中西部の架空の都市を舞台に活躍する長編ミステリー「18号室の患者」でデビューを果しました。

 彼女の作品はミステリ評論家ハワード・ヘイクラフトの名付けたいわゆる”H・I・B・K(Had-I-Bat-Known)”派の部類に属し、「もし知ってさえいたら…」と主人公に語らせることで心理状態を細やかに描写していき、サスペンス感を高めていく手法を多用しています。

 この点この作風の先駆者であるアメリカの女流作家メアリー・ロバーツ・ラインハートとともにこの分野の代表的作家として位置づけられ、後世の女流サスペンス作家たちの手本となっています。

死を呼ぶスカーフ
「死を呼ぶスカーフ」
(1939年)
(論創社)

 またその活動期間も非常に長く、毎年1、2冊のペースで定期的に作品を発表し続け、全部で59冊の長編を残しています。作家活動以外にもアメリカ探偵作家クラブ(MWA)の会長にも就任するなど、多岐に渡る活躍を見せました。

 そして1971年には、それらの功績が讃えられてアメリカ探偵作家クラブ(MWA賞)の巨匠賞が授与されています。


■作家ファイル■

出身地
アメリカ、ネブラスカ州リンカーン
学歴
ウェスレイアン大学卒
生没
1899年7月6日~1996年10月8日
作家としての経歴
1929
セアラ・キートとランス・オリアリーものの第1作「18号室の患者」でデビュー
以後長編59冊と4冊の短編集を発表
1930
ダブルデイ社の年間ベストセラー・ミステリ賞を受賞
1971
アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞の巨匠賞を受賞
1977
アメリカ探偵作家クラブ(MWA)の会長に就任
シリーズ探偵
看護婦セアラ・キート&警察官ランス・オリアリー (Nurse Sara Keate & Lance O'Leary)
女流推理作家スーザン・デア (Susan Dare)
銀行家探偵ジェイムズ・ウィクワイヤー (Mr. James Wickwire)
代表作
「暗い階段」
「霧中殺人事件」
「スーザン・デアの事件簿」(短編集)

■著作リスト■

1 看護婦セアラ・キート登場作品リスト

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Patient in Room 18
(18号室の患者)
1929 - オリアリー
2 While the Patient Slept 1930 -
3 The Mystery of Hunting's End -
4 暗い階段 1931 六興出版部 六興推理小説選書113('58) オリアリー
5 Murder by an Aristocrat
(英 Murder of My Patient)
1932 -
6 Wolf in Man's Clothing 1942 -
7 Man Missing 1954 -

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Mignon G. Eberhart's Best Mystery Stories 1988 - スーザン・デア2編、ウィクワイヤー6編他全14編
1 The Old Man's Diamond 1934 -

【未収録短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 九号室の患者 新青年'40.2

2 スーザン・デア登場作品リスト

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Cases of Susan Dare
(スーザン・デアの事件簿)
1934 - クイーンの定員88
1 スザン・デア紹介
(スーザン・デア登場)
1934 HPB253「名探偵登場4」('56)
HMM'77.6
2 スパイダー
(蜘蛛)
(蜘蛛猿)
創元推理文庫104-26「犯罪の中のレディたち/上」('79)
HMM'79.11
ぷろふいる'36.2
3 Easter Devil
イースター島の悪魔
HMM'97.2
4 The Claret Stick -
5 The Man Who Was Missing
空部屋
スタア'35.9下旬-10下旬号
6 The Calico Dog
絡繰二人ディレック
新青年'40春季増刊
2 Mignon G. Eberhart's Best Mystery Stories 1988 - セアラ・キート1編、ウィクワイヤー6編他全14編
1 スザン・デア紹介
(スーザン・デア登場)
1934 HPB253「名探偵登場4」('56)
HMM'77.6
再収録
2 The Calico Dog
絡繰二人ディレック
新青年40春季増刊

【未収録中短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Postiche
スザン・デァの推理
1935 宝石'57.6(12-8)
2 Strangers in Flight
(高架線の戦慄)
1941 代々木書房 現代大衆文学全集('40) 表題中編のみ収録
邦訳は別作家の作品も併録

3 銀行家探偵ジェイムズ・ウィクワイヤー登場作品リスト

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Mignon G. Eberhart's Best Mystery Stories 1988 - セアラ・キート1編、スーザン・デア2編他全14編
1 Murder by Night
(The Hound of the Wellingtons)
1955 -
2 聖ヴァレンタインの殺人 1954 EQMM'58.7
3 Mr. Wickwire's Widow
ウィックワイヤー氏の未亡人
1953 HMM'84.8
4 The Blonde from Sumatra 1952 -
5 ウィクワイヤー氏の《姐御》 1956 東京創元社「アメリカ探偵作家クラブ傑作選1」('61)
6 ワグスタフ家の真珠 1952 早川書房「復刻エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン No.1-3」('95)
EQMM'56.9

【未収録短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 No Cry of Murder
声なき殺人
(恐怖の翼)
1953 EQMM'57.2
スタア'46.4
2 The Rain Dripped Death -
3 Date to Die 1954 -

4 その他の作品

【長編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 The Dark Garden
(英 Death in the Fog)
(霧中殺人事件)
1933 日本公論社 翻訳探偵小説('36)
2 The White Cockatoo -
3 The House on the Roof 1935 -
4 Fatal Warning 1936 -
5 Danger in the Dark
(英 Hand in Glove)
1937 -
6 The Pattern -
7 The Glass Slipper 1938 -
8 Hasty Wedding -
9 Brief Return 1939 -
10 死を呼ぶスカーフ 論創社 論創海外ミステリ9('05)
11 The Hangman's Whip 1940 -
12 見ざる聞かざる 1941 HPB654 ミニョン・エバーハート
13 With This Ring -
14 The Man Next Door 1943 -
15 Unidentified Woman -
16 Escape the Night 1944 -
17 Wings of Fear 1945 -
18 Five Passengers from Lisbon 1946 -
19 The White Dress -
20 Another Woman's House 1947 -
21 House of Storm 1949 -
22 Hunt with the Hounds 1950 -
23 Never Look Back 1951 -
24 Dead Man's Plans 1952 -
25 The Unknown Quantity 1953 -
26 Postmark Murder 1956 -
27 Another Man's Murder 1957 -
28 Melora 1959 -
29 Jury of One 1960 -
30 The Cup, the Blade, or the Gun
(英 The Crime at Honotassa)
1961 -
31 Enemy in the House 1962 -
32 Run Scared 1963 -
33 Call after Midnight 1964 -
34 R.S.V.P. Murder 1965 -
35 Witness at Large 1966 -
36 Woman on the Roof 1968 -
37 Message from Hong Kong 1969 -
38 El Rancho Rio 1970 -
39 Two Little Rich Girls 1972 -
40 The House by the Sea -
41 Murder in Waiting 1973 -
42 Danger Money 1975 -
43 Family Fortune 1976 -
44 Nine O'Clock Tide -
45 The Bayou Road 1979 -
46 Casa Madrone 1980 -
47 Family Affair 1981 -
48 Next of Kin 1982 -
49 The Patient in Cabin C 1983 -
50 Alpine Condo Crossfire 1984 -
51 A Fighting Chance 1986 -
52 Three Days for Emeralds 1988 -

【短編集】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 Five of My Best 1949 -
1 Bermuda Grapevine
オパールの海
1938 スタア'38.11臨時増刊
2 Deadly Is the Diamond -
3 Express to Danger 1939 - スーザン・デア?
4 Murder Goes to Market -
5 Stranges in Flight - スーザン・デアものの「高架線の戦慄」とは別ヴァージョン
2 Deadly Is the Diamond 1951 - 1から2編再収録
全4編
1 The Crimson Paw 1952 -
2 Murder in Waltz Time -
3 The Crimson Paw 1959 - 2編再収録
全3編
1 Kate Shane -
4 Mignon G. Eberhart's Best Mystery Stories 1988 - セアラ・キート1編、スーザン・デア2編、ウィクワイヤー6編他全14編
1 Bermuda Grapevine
オパールの海
1938 スタア'38.11臨時増刊 1から再収録
2 The Crimson Paw 1952 - 2から再収録
3 Murder in Waltz Time -
4 The Gate at Number Ninety -
5 The Jade Cup -

【その他の未収録短編】

No. 事件名 発表年 邦訳 備考
1 ドッグ・ショウ殺人事件
(ドッグ・ショーの殺人)
1958 光文社文庫「世界ベスト・ミステリー50選/上」('94)
EQ'91.9
HMM'92.3

【参考】「ハヤカワミステリマガジン1977年6月号」(早川書房)
「ハヤカワミステリマガジン1979年11月号」(早川書房)
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