もともとはイギリス出身で、アメリカに渡って活躍した推理小説家。
ちなみに”パトリック・クェンティン”というのはペンネームで、実際は2人(ないし単独名義)の作家がコンビを組んで作品を発表しました。また他にもクェンティン・パトリックとジョナサン・スタッジの2つのペンネームを使い分けて作品を発表しています。
この点、関わった人物とその時期に発表された作品との関係は複雑でかなり分かりにくいのですが、大きく分けて整理すると3つの時期があります。
まず第1期はリチャード・W・ウェッブ単独か、それに加えてマーサ・M・ケリーないしメアリー・L・アズウェルのどちらかがコンビを組んで作品を発表し、本格色のかなり強い作品が多いと言われています。
第2期はウェッブとヒュー・C・ホイーラーの2人がコンビを組んだ時期で、この期間がもっとも長く、それに比例して作品数も多く存在します。ウェッブの本格色にホイーラーのサスペンス色を加味した複合的な要素を持つ作品が多いのが特徴です。
第3期は健康上の理由からウェッブが離脱し、ホイーラー単独で作品を発表した時期ですが、この時期になると本格には捉われずに色々なジャンルの要素を加味した作風が目立つようになります。
リチャード・ウィルスン・ウェッブはイギリスで生まれましたが、後にアメリカに渡って製薬会社の重役を務めています。作家としては第1期での単独ないし合作と、第2期のホイーラーとの合作に参加しましたが、1952年の「女郎ぐも」を最後に体調を崩して作家生活を断念し、以後はホイーラー単独での作品発表となります。
ウェッブが参加した時期はダルース夫妻かトラント警部が活躍する作品が多く、「俳優パズル」に代表されるダルース夫妻ものの初期のパズル・シリーズ6作品は本格色が濃く傑作揃いといわれています。
ヒュー・キャリンガム・ホイーラーも同じくイギリスに生まれ、ロンドン大学を卒業してアメリカに渡り、後に帰化しています。ミステリ作家としてだけでなく1960年代に入ると演劇の分野でも活躍をはじめ、この部門での賞もいくつか獲得しています。
ホイーラーは第2期でまずウェッブと合作をし、1952年のウェッブ離脱後は単独でクェンティン名義で作品を発表しました。この時期は「二人の妻をもつ男」などに代表されるように、本格と同時にサスペンスの色合いが非常に濃く、また悪女を題材にした作品が多いのが特徴です。
また短編作家としても才能を発揮して、1961年発表の短編集「金庫と老婆」でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞の特別賞も受賞しています。
No. | 事件名 | 発表年 | 名義 | 邦訳 | 備考 | |
1 | The Dogs Do Bark (英 Murder Gone to Earth) |
1937 | JS | ウェッブ& ホイーラー |
- | |
2 | Murder by Prescription (英 Murder or Mercy) |
1938 | - | |||
3 | The Stars Spell Death (英 Murder in the Stars) |
1939 | - | |||
4 | Turn of the Table (英 Funeral for Five) |
1940 | - | |||
5 | The Yellow Taxi (英 Call a Hearse) |
1942 | - | |||
6 | The Scarlet Circle (英 Light from a Lantern) |
1943 | - | |||
7 | Death, My Darling Daughters (英 Death and the Dear Girls) |
1945 | - | |||
8 | Death's Old Sweet Song | 1946 | - | |||
9 | The Three Fears | 1949 | - |
No. | 事件名 | 発表年 | 名義 | 邦訳 | 備考 | |
1 | Cottage Sinister | 1931 | QP | ウェッブ& ケリー |
- | |
2 | Murder at Cambridge (英 Murder at the Varsity) |
1933 | QP | ウェッブ | - | |
3 | 死を招く航海 | QP | ウェッブ& アズウェル |
新樹社 エラリー・クイーンのライヴァルたち3('00) | ||
4 | Murder at the Women's City Club (英 Death in the Dovecote) |
1935 | QP | ウェッブ& ケリー |
- | |
5 | グリンドルの悪夢 | QP | ウェッブ& アズウェル |
原書房 ヴィンテージ・ミステリー・シリーズ('08) | ||
6 | Death Goes to School | 1936 | QP | ウェッブ& ホイーラー |
- | |
7 | File on Fenton and Farr | 1937 | QP | - | ||
8 | Return to the Scene (英 Death in Bermuda) |
1941 | QP | - | ||
9 | 追跡者 (影を追う男) (エリーはどこへいった?) |
1950 | PQ | 創元推理文庫147-2 集英社 ジュニア版世界の推理22('73) 学研 中学二年コース'69.6第2付録(抄訳) |
||
10 | Danger Next Door | 1951 | QP | - | ||
11 | 二人の妻をもつ男 | 1955 | PQ | ホイーラー | 創元推理文庫147-1 東京創元社 現代推理小説全集3('58) 東京創元社 世界名作推理小説大系23('61) |
|
12 | 網にかかった男 | 1956 | 創元推理文庫147-5 | |||
13 | 疑惑の場 | 1957 | HPB732 | 主人公ニッキー | ||
14 | わたしの愛した悪女 | 1960 | HPB693 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | 金庫と老婆 | 1961 | HPB774 (5~7を除く) |
MWA賞特別賞 クイーンの定員119 PQ(ホイーラー) |
|
1 | 金庫と老婆 | ||||
2 | 少年の意志 | 早川書房 世界ミステリ全集18「37の短篇」('73) 荒地出版社「戦後推理小説・ベスト15〈1945-1959〉」 |
QP | ||
3 | 親殺しの肖像 (ある殺人者の肖像) |
1942 | 創元推理文庫100-5「世界短編傑作集5」('61) 東京創元社 世界推理小説全集71「世界短篇傑作集3」('59) |
QP | |
4 | 姿を消した少年 | ||||
5 | 検察側証人 (11才の証言) |
1946 | 東京創元社「アメリカ探偵作家クラブ傑作選2」('61) EQMM'57.3 |
QP | |
6 | The Pigeon Woman 鳩の好きな女 |
EQMM'58.1 | QP | ||
7 | All the Way to the Moon はるか彼方へ |
1951 | HMM'03.6 | QP | |
8 | 母親っ子 | ||||
9 | 汝は見たもう神なり | 1949 | EQMM'59.1 | ||
10 | ミセス・アプルビイの熊 | ||||
11 | ルーシイの初恋 (ルウシイの初恋) |
1947 | 青弓社「殺人コレクション」('92) EQMM'57.10 |
QP | |
12 | 不運な男 | 1948 | 早川文庫80-7「エドガー賞全集/上 アメリカ探偵作家クラブ傑作選6」('83) |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | ダイヤのジャック | 1936 | 別冊宝石70('57) | QP |
2 | Murder on New Year's Eve 大晦日の殺人 |
1937 | 宝石'56.12 | PQ |
3 | Another Man's Poison 他人の毒薬 (クナドスン博士) |
1940 | EQMM'61.8 ポプラ社 ジュニア世界ミステリー16「病院の怪事件」('68) |
QP |
4 | The Last of Mrs Maybrick | 1943 | - | |
5 | This Way Out | 1947 | - | |
6 | 七転八起 | 1948 | HPB722「EQMMアンソロジー I」('62) | PQ |
7 | Mrs. B.'s Black Sheep (Passport for Murder) |
1950 | - | |
8 | Death Fright | 1951 | - | |
9 | Town Blonde, Country Blonde | - | ||
10 | 笑う男 | 1953 | 中学三年コース'64.3第3付録 中学生傑作文庫 EQMM'64.1 |
PQ |
11 | The Hated Woman | - | ||
12 | The Red Balloon | - | ||
13 | The Glamorous Opening | 1954 | - | |
14 | Death and Canasta | - | ||
15 | The Predestined | - | ||
16 | Going, Going, Gone ! | 1956 | - | |
17 | Lioness vs. Panther | 1958 | - | |
18 | 深夜の外科病室 | 鶴書房 ミステリ・ベストセラーズ | QP 原題不明(3と同じ?) |
|
19 | ふとった猫 | 二見書房「気ままな猫の14物語」('91) | PQ | |
20 | ビフテキとハンバーガー | 芸術社 推理選書「四つ辻にて」 | PQ どのシリーズか不明 |
No. | 事件名 | 発表年 | 名義 | 邦訳 | 備考 | |
1 | The Girl on the Gallows | 1954 | QP | ウェッブ& ホイーラー |
- | 犯罪実話 |