SF界の巨匠であり科学者・評論家としても活躍したアイザック・アシモフの〈黒後家蜘蛛の会〉シリーズで探偵役を務めるニューヨークのレストラン〈ミラノ〉の老給仕。年齢は60代ですが顔には皺ひとつなく、いつも穏やかで控え目な人物で、給仕としては一流の腕を持っています。
一方〈黒後家蜘蛛の会〉とは、女人禁制の会員制のクラブで、弁護士、暗号専門家、作家、有機化学者、画家、数学者という各界の専門家たち6人がそのメンバーとして名を連ねています。
そしてメンバーは毎月1回定例会を開き、各人が持ち出した難問奇問の数々についてみんなで知恵を出し合い解明しようとするのですが……いつも決まって解決するのが、何を隠そうこの慎ましやかな老給仕なのです。
メンバーが頭をさんざん悩ませた後、遠慮がちに口を挟み、真相を解明してみせるのですが、「君は大した探偵だ」とメンバーに賞賛されても、「私は落穂拾いをするだけでございます」と到って謙虚な姿勢を崩さない何とも紳士的な人物です。
どことなくミステリーの女王アガサ・クリスティーのミス・マープルものの短編集「火曜クラブ」を彷彿とさせるこのシリーズですが、作者の稚気溢れるアイデアとパズルとしての面白さが評判を呼び、安楽椅子探偵ものの名シリーズとして長い間高い人気を誇りました。
全部で5冊の短編集と、未収録の短編が何作品か残されています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | 黒後家蜘蛛の会1 | 1974 | 創元推理文庫167-1 | EQアンケート34位 (シリーズとして) |
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1 | 会心の笑い (忍び笑う筐) |
1972 | HMM'72.4 | シリーズ第1作 6に再収録 |
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2 | 贋物(Phony)のPh (いかさま博士) |
HMM'72.10 | 6に再収録 | ||
3 | 実を言えば (嘘はつかない男) |
HMM'73.2 | |||
4 | 行け、小さき書物よ (ペーパーマッチ蒐集家) |
HMM'75.6 | |||
5 | 日曜の朝早く (体内時計) |
1973 | HMM'74.8 | 6に再収録 | |
6 | 明白な要素 | HMM'73.10 | 6に再収録 | ||
7 | 指し示す指 (指は示す) |
HMM'74.1 | |||
8 | 何国代表? (ミス・アースへの警告) |
HMM'74.5 | |||
9 | ブロードウェイの子守歌 | 1974 | |||
10 | ヤンキー・トゥードゥル都へ行く | ||||
11 | 不思議な省略 | ||||
12 | 死角 (六人の容疑者) |
1973 | HMM'74.3 | ||
2 | 黒後家蜘蛛の会2 | 1976 | 創元推理文庫167-2 | ||
1 | 追われてもいないのに (追われずとも) (心疾しきは……) |
1974 | 新潮文庫「16品の殺人メニュー」('97) HMM'75.2 |
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2 | 電光石火 (眼よりも早く) |
HMM'74.11 | |||
3 | 鉄の宝玉 | 6に再収録 | |||
4 | 三つの数字 | ||||
5 | 殺しの噂 | ||||
6 | 禁煙 | ||||
7 | 時候の挨拶 | 1976 | |||
8 | 東は東 | 1975 | |||
9 | 地球が沈んで宵の明星が輝く | ||||
10 | 十三日金曜日 | 1976 | |||
11 | 省略なし | ||||
12 | 終局的犯罪 | ||||
3 | 黒後家蜘蛛の会3 | 1980 | 創元推理文庫167-3 | ||
1 | ロレーヌの十字架 (ローレーヌの十字架) |
1976 | 早川文庫2-35「クイーンズ・コレクション1」('83) HMM'76.7 |
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2 | 家庭人 (コンピューター犯罪法) |
HMM'77.1 | |||
3 | スポーツ欄 | 1977 | HMM'77.6 | ||
4 | 史上第二位 | 1980 | |||
5 | 欠けているもの | 1977 | |||
6 | その翌日 (あすは今日の次の日) |
1978 | 講談社文庫「安楽椅子探偵傑作選」('79) EQ'78.9 |
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7 | 見当違い (迷える黒き小羊) |
1979 | EQ'79.7 | ||
8 | よくよく見れば (ダイイング・メッセージ) |
EQ'79.9 | |||
9 | かえりみすれば | ||||
10 | 犯行時刻 | 1980 | |||
11 | ミドル・ネーム | ||||
12 | 不毛なる者へ | 1979 | EQ'79.11(12) | 6に再収録 | |
4 | 黒後家蜘蛛の会4 | 1984 | 創元推理文庫167-5 | ||
1 | 六千四百京の組み合わせ | 1980 | EQ'80.9 | 6に再収録 | |
2 | バーにいた女 (似非野球狂) |
EQ'80.11 | |||
3 | 運転手 | 1984 | |||
4 | よきサマリア人 (よきサマリアびと) |
1980 | 新潮文庫「ビッグ・アップル・ミステリー」('85) EQ'81.1 |
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5 | ミカドの時代 | 1981 | EQ'81.5 | ||
6 | 証明できますか? (証明不可能?) |
EQ'81.9 | |||
7 | フェニキアの金杯 | 1982 | EQ'82.7 | ||
8 | 四月の月曜日 | 1983 | EQ'83.7(34) | ||
9 | 獣でなく人でなく (獣でなし人でなし) |
1984 | EQ'84.7 | ||
10 | 赤毛 | EQ'85.1 | 6に再収録 | ||
11 | 帰ってみれば | 6に再収録 | |||
12 | 飛入り | ||||
5 | 黒後家蜘蛛の会5 | 1990 | 創元推理文庫167-8 | ||
1 | 同音異義 | 1985 | EQ'85.7(46) | ||
2 | 目の付けどころ | ||||
3 | 幸運のお守り | 1990 | |||
4 | 三重の悪魔 | 1985 | EQ'86.1 | 6に再収録 | |
5 | 水上の夕映え | 1986 | EQ'86.11 | ||
6 | 待てど暮らせど | EQ'87.5(57) | |||
7 | ひったくり | 1987 | EQ'87.9 | ||
8 | 静かな場所 | 1988 | EQ'88.7(64) | ||
9 | 四葉のクローバー | 1990 | |||
10 | 封筒 | 1989 | EQ'89.9(71) | ||
11 | アリバイ | EQ''90.1(73) | |||
12 | 秘伝 | 1990 | |||
6 | The Return of the Black Widowers | 2003 | - | 未収録作品6編含む全16編 10編は再収録 |
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1 | Northwestward 黒後家蜘蛛とバットマン |
1989 | 現代教養文庫「バットマンの冒険2」('90) | ||
2 | Yes, But Why? さはさりながら |
1990 | HMM90.11 | ||
3 | Lost in a Space Warp スペースワープ |
EQ'90.7 | |||
4 | Police at the Door 警官隊がやってきた |
1991 | EQ'91.3 | ||
5 | The Haunted Cabin 幽霊屋敷 |
EQ'91.9 | |||
6 | The Guest's Guest ゲストのゲスト |
1992 | EQ'97.11 EQ'92.3 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Last Story 黒後家蜘蛛の会 最後の物語 |
2002 | HMM'07.5 | チャールズ・アーダイ著 |
【参考】名探偵コナン37巻(小学館)