レジナルド・フォーチュン氏
(Mr. Reginald (Reggie) Fortune)

　イギリスの作家Ｈ・Ｃ・ベイリーが生み出したブロンドで丸顔、そして美食と酒をこよなく愛する名探偵。

　いつも快活な表情で周囲の人々に健全な印象を与え、オックスフォード在学中は友人からも教授からも愛される好青年であったといいます。

　本業は開業医で、同じく医師であった父親から譲り受けたロンドン郊外のウェストハンプトンにある診療所で診療の日々を送っていましたが、ある日旅行に出かけた父親の代わりに開業医として郊外に赴いた際に起きた二つの事件を外科と病理学の知識を活かして鮮やかに解決に導いたことから一躍注目を集め、その後はスコットランド・ヤードの犯罪捜査部顧問として度々出馬を請われるようになります。

　元々若い頃から人間に対する興味をもっていたらしく、その鋭い観察力・洞察力で人間の行動の裏に潜む動機や性格を見抜くのが得意です。そのためスコットランド・ヤードのベル警視からは「彼は人間というものを驚くほどよく知っている」と評され、今ではすっかり一目置かれる存在になりました。

　フォーチュン氏のデビューは1920年で、ちょうどホームズのライヴァルの時代とアガサ・クリスティー、Ｆ・Ｗ・クロフツらの本格ミステリ黄金時代の作家たちの登場の境目に登場した探偵です。

　そのためシャーロック・ホームズやブラウン神父のような直観型の超人的推理を発揮するのが彼の特徴の一つである一方で、同時に人間や社会の裏側にも目を向けることのできる、人間味のある温かさを兼ね備えた魅力的なキャラクターでもあります。そしてそれが彼の最大の特徴であり、他の超人的探偵たちには見られない彼独特の持ち味となって読む者の心を捉えます。

　フォーチュン氏の活躍する作品は短編で約80ありますが、通常シリーズものは後期になるほど評価は下がるものですが、このシリーズは後期の方がむしろ評価が高いという珍しいシリーズです。また長編もありますが、こちらは日本ではまだ紹介されていません。