脱文明の孤独な海の男
アメリカの推理小説家ジョン・D・マクドナルドが生み出した、免許を持たず自らの腕だけを頼りに世の中を生き抜いていく無免許私立探偵の草分け的存在。
初登場時は40歳で、その風貌は海暮らしが長く潮風にいつも当っているため顔は真っ赤に日焼けして、フットボールで鍛えた体は見事に引き締まっており、また朝鮮戦争に従軍した経験を持つ歴戦の勇士でもあります。
彼の主な仕事は詐欺や盗難の被害に遭っても警察に届け出ることが都合が悪い人間の代わりに盗まれた金品などを取り返すことで、取り返した金額の半分を報酬として受け取り生計を立てています。
但し無免許ではあるものの探偵のプロとして、失敗した場合は報酬は一文も受け取らない主義は貫き通しています。
普段はフロリダの海に浮かべた52フィート(全長16メートル)のハウスボート〈バステッド・フラッシュ〉号を自らの住まいとし、かたや陸上では1923年型のロールス・ロイスをピックアップ・トラックに改造した〈ミス・アグネス〉をその足として使っています。
また女性のために働くことが多く海と博打が大好きなプレイボーイですが、現代文明には否定的であり、時には自らをドロップアウトと呼んで冷めたものの見方をすることもあるクールな一面もあります。
このトラヴィス・マッギーのシリーズは、1963年に初登場作「濃紺のさよなら」が発表されて以来アメリカ本国では大変な人気を獲得し、全部で21長編が発表されましたが、その作品全てに色の名前が入っており、〈カラー・シリーズ〉と呼ばれて親しまれています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 濃紺のさよなら | 1963 | HPB1004 | 濃紺色(ディープブルー) |
2 | 桃色の悪夢 | 1964 | HPB929 | 桃色(ピンク) |
3 | 紫色の死地 | HPB1026 | 紫色(パープル) | |
4 | 赤い雌狐 | HPB932 | 赤色(レッド) | |
5 | A Deadly Shade of Gold | 1965 | - | 金色(ゴールド) |
6 | オレンジ色の屍衣 | HPB1059 | オレンジ色(橙) | |
7 | 琥珀色の死 | 1966 | HPB1018 | 琥珀色(アンバー) |
8 | 黄色い恐怖の眼 | HPB1071 | 黄色(イエロー) | |
9 | 薄灰色に汚れた罪 | 1968 | 長崎出版 海外ミステリGemコレクション3('07) | 灰色(グレー) |
10 | The Girl in the Plain Brown Wrapper | - | 茶色(ブラウン) | |
11 | The Long Lavender Look | 1970 | - | 薄紫色(ラベンダー) |
12 | A Tan and Sandy Silence | 1971 | - | 黄褐色 |
13 | Dress Her in Indigo | - | 紺色(インディゴ) | |
14 | The Scarlet Ruse | 1973 | - | 緋色(スカーレット) |
15 | 紺碧の嘆き | HPB1341 | 青緑色(トルコ石=ターコイズ色) | |
16 | レモン色の戦慄 | 1974 | 角川文庫('83) | レモン色 |
17 | 赤く灼けた死の海 | 1978 | 角川文庫('87) | 赤銅色(カッパー) |
18 | The Green Ripper | 1979 | - | 緑色(グリーン) |
19 | Free Fall in Crimson | 1981 | - | 深紅色(クリムゾン) |
20 | Cinnamon Skin | 1982 | - | ニッケイ色(シナモン) |
21 | The Lonely Silver Rain | 1984 | - | 銀色(シルバー) |