古き良き開拓精神の持ち主
悪徳弁護士”ランドルフ・メイスン”シリーズでも有名なアメリカの作家メルヴィル・D・ポーストが生み出した、開拓時代─即ち19世紀初頭、第3代ジェファーソン大統領の時代(1801-09)を舞台に活躍する質実剛健な名探偵。
大柄で肩幅が広く胸の厚いサクソン人で、贅肉のないがっしりとした体格。クロムウェルを思い起こさせる骨格が鉄でできたような顔立ちに真空の彼方の空間を思わせるようなしっかりと落着いた灰色の目を持っていて、まさに大自然の雄大さを感じさせる風貌を備えています。
独立してまだ間もなく、牛泥棒や無法者が横行し、リンチが公然と行われている荒っぽい開拓地において、いつも聖書を愛読し、岩のような良識のかたまりで、神の摂理と民主主義を頑固なまでに主張し続けるアブナーは、ソロモンのように鋭い叡知を駆使し、鮮やかな推理で犯人を暴き出します。
物語はアブナーの弟ルーファスの子で、アブナー伯父の甥にあたるマーティン少年の手によって語られます。
21の短編と1つの中編の全22編に登場しますが、トリッキーな謎解きだけではなく、アブナーの語りに思わず胸が熱くなるような感動的な作品が多いのが特徴です。
中でも短編「ナボテの葡萄園」は、個人的には古今東西の世界中の全短編中でもベスト5に入れたいほど完成度の高い素晴らしい作品です。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | アンクル・アブナーの叡知 | 1918 | 早川文庫33-1 | ハヤカワベスト100・65位 クイーンの定員60 |
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1 | ドゥームドーフ殺人事件 (ズームドルフ殺人事件) (ドゥームドーフの謎) (神の審判) (ヅームドルフ事件) |
1914 | 創元推理文庫100-2「世界短編傑作集2」('61) 早川文庫277-1「密室殺人傑作選」('03) 集英社「メランコリックな犯罪」('81) HPB1161「密室殺人傑作選」 東京創元社 世界推理小説全集50「世界短篇傑作集1」('57) 別冊宝石38('54) |
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2 | 手の跡 | 1911 | 発表順2 | ||
3 | 神の使者 (天の使い) |
1911 | 創元推理文庫179-1「アブナー伯父の事件簿」 HMM'76.1 |
最初に発表された事件 | |
4 | 神のみわざ (不可抗力) (神の所業) |
1913 | 創元推理文庫179-1「アブナー伯父の事件簿」 HPB251「名探偵登場2」('56) |
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5 | 宝さがし (海賊の宝物) |
1915 | 創元推理文庫179-1「アブナー伯父の事件簿」 HMM'68.11 |
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6 | 死者の家 | 1911 | HMM'76.7 | 発表順3 | |
7 | 黄昏の怪事件 (私刑) |
1914 | 創元推理文庫179-1「アブナー伯父の事件簿」 HMM'68.7 |
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8 | 奇跡の時代 | 1916 | HMM'75.4 | 発表当時は非アブナーものの短編 | |
9 | 第十戒 | 1912 | 発表順4 | ||
10 | 黄金の十字架 (悪魔の道具) |
1917 | 創元推理文庫179-1「アブナー伯父の事件簿」 HMM'72.3 |
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11 | 魔女と使い魔 (地の掟) |
1914 | 創元推理文庫179-1「アブナー伯父の事件簿」 | ||
12 | 金貨 | 1912 | HMM'72.10 | ||
13 | 藁人形 | 創元推理文庫179-1「アブナー伯父の事件簿」 HMM'75.4 |
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14 | 神の摂理 (偶然の恩恵) |
創元推理文庫179-1「アブナー伯父の事件簿」 HMM'75.7 |
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15 | 禿鷹の目 | ||||
16 | 血の犠牲 | HMM'75.10 | |||
17 | 養女 | 1916 | 創元推理文庫179-1「アブナー伯父の事件簿」 HMM'68.9 |
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18 | ナボテの葡萄園 | 1916 | 創元推理文庫179-1「アブナー伯父の事件簿」 光文社文庫「クイーンの定員 II」('92) HPB219「黄金の十二」('55) |
黄金の十二 | |
2 | The Methods of Uncle Abner | 1974 | 創元推理文庫179-1「アブナー伯父の事件簿」 | 短編集1に未収録の4編を収めた限定本 | |
1 | 悪魔の足跡 | 1927 | 別冊宝石93('59) | ||
2 | アベルの血 (神の御手) |
1927 | HMM'77.11 | ||
3 | 闇夜の光 (闇夜) |
1927 | EQMM'62.3 | ||
4 | 〈ヒルハウス〉の謎 | 1928 | アブナー譚最終作品 唯一の中編 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | The Complete Uncle Abner | 1977 | - | 短編集1と2の全作品を収録 |
すべてジョン・F・サッターの手によるアブナーの後日譚
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 最古の掟 | 1979 | EQ'80.3(14) | |
2 | The Angel’s Hair | 1980 | - | |
3 | The Shades of Death | - | ||
4 | The Power of the Tongue | 1981 | - | |
5 | The Unclean Spirit | 1983 | - |
【参考】「アンクル・アブナーの叡知」(早川書房 ハヤカワミステリ文庫)