ニック・カーター
(Nick Carter)

　アメリカの国民的ヒーローとして有名なシリーズキャラクター。

　ダイム・ノヴェル時代に清教徒的禁欲生活者として登場し、その後小説だけでなくラジオや映画、テレビなどで活躍。今日まで生き続ける代表的なアメリカン・ヒーローとなりました。

　初登場は1886年9月で、これは1887年に「緋色の研究」でデビューした名探偵シャーロック・ホームズの登場よりも１年前のことでした。

　この当時は青年探偵として論理的思考を働かせて事件を解決していく、まさしくシャーロック・ホームズのライヴァルと呼ぶにふさわしい探偵小説の主人公で、数多くの雑誌に掲載され大人気を集めたといいます。

　ホームズ同様に変装も得意としたこのニック・カーターのシリーズは、1915年までに少なくとも1261冊書かれて出版されたらしく、弁髪の中国人から、片眼鏡の紳士、灰色髪の老婆に麦わらを噛んでいる髭の田舎者トップハットに葉巻をくゆらせた実業家、歯をむき出しにした黒人などに変幻自在に変装して読者を驚かせてくれました。

　そんな数多くの作品群の中で代表作と目されるのが、1899年に発表された短編集「The Detective's Pretty Neighbor（探偵の美しき隣人）」で、この作品はエラリー・クイーンの手によって発掘・再評価され、クイーンの定員にも選ばれています。

　それから時代は流れて1960年代、アメリカ国内でハードボイルドやスパイ小説が全盛期の頃になると、このキャラクターは青年探偵からプレイボーイ・スパイに変貌を遂げます。

　〈キルマスター〉と呼ばれるシリーズの中でペイパーバック・ヒーローとなったニック・カーターは、以後1990年頃までに何と250以上の作品で大活躍を見せることになります。