「悪女書きのアルレー」と呼ばれるフランス・サスペンス界の女王
フランスの女性推理小説家。女流作家らしく詳細な経歴は明らかにされていませんが、幼児より両親と二度に渡って世界旅行を経験し、中国や東洋諸国、アメリカなどを周り見聞を広めます。そして女優を志して学業を放棄し、パリの劇場に3年間出演してそれから映画界に転身を図り舞台・女優経験を積みますが、ロケ先のモロッコで知りあった青年実業家のマーク・フォンテーヌと結婚して女優を引退しました。
もっとも結婚生活は上手くいかなかったらしく、ほどなく離婚し小説家として第二の人生を歩み始めます。そして1953年、17歳の若さで第1作「死の匂い」を発表して作家デビューを果たしました。ちなみに翌1954年にはアルレーと同年代のフランソアズ・サガンも「悲しみよ今日は」でデビューを果しています。
それから3年後の1956年に第2作の長編「わらの女」を発表しますが、サディスティックでモラルの欠如した特異な人物描写と著者自身の美貌も話題を呼んで世界的なヒットを記録し、一躍一流作家の仲間入りを果たしました。「わらの女」は最初スイスのジュベール社より刊行され、翌年には英訳、更にリーダーズダイジェスト社の紹介もあって20カ国以上に翻訳されています。
以後も「目には目を」「黄金の檻」「泣くなメルフィー」「二千万ドルと鰯一匹」などのヒット作を次々と生み出し映画化もされ、フランス・サスペンス界の女王として今日も高い評価を得ています。
アルレーの作風は「悪女書きのアルレー」と称されるように、悪人、とりわけ悪女を描く所に持ち味があり、更に同時期にデビューして「悪魔のような女」などで同じく悪女を扱った作品に定評のあるボアロー&ナルスジャックや「死刑台のエレベーター」のノエル・カレフらと同じく、謎解きよりも心理描写に特に優れた才能を発揮している系統の作家といえます。
他にも冒険もので国際サスペンス大賞受賞作品の「剣に生き、剣に斃(たお)れ」や、近未来ミステリーの「死体銀行」など幅広い作風の作品を発表。日本でもその人気は極めて高く、そのほとんど全ての作品が邦訳されていて、ドラマ化もされています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 死の匂い | 1953 | 創元推理文庫140-4 | |
2 | わらの女 (藁の女) |
1956 | 創元推理文庫140-27(新装版) 創元推理文庫140-1 東京創元社 クライム・クラブ16('58) 東京創元社 世界名作推理小説大系21('62) |
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3 | 死者の入江 | 1959 | 創元推理文庫140-2(合本) 創元推理文庫275 |
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4 | 目には目を | 1960 | 創元推理文庫140-5 | |
5 | 黄金の檻 | 1961 | 創元推理文庫140-3(合本) 創元推理文庫304 |
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6 | 泣くなメルフィー | 1962 | 創元推理文庫140-3(合本) 創元推理文庫348 |
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7 | 大いなる幻影 | 1966 | 創元推理文庫140-2(合本) 創元推理文庫342 |
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8 | 死体銀行 | 1968 | 創元推理文庫140-17 | |
9 | 剣に生き、剣に斃れ | 創元推理文庫140-7 | 国際サスペンス大賞受賞 | |
10 | 二千万ドルと鰯一匹 | 1971 | 創元推理文庫140-6 | |
11 | 死ぬほどの馬鹿 | 1972 | 創元推理文庫140-11 | |
12 | 決闘は血を見てやめる | 1973 | 創元推理文庫140-9 | |
13 | 犯罪は王侯の楽しみ | 創元推理文庫140-8 | ||
14 | 黒頭巾の孤島 | 創元推理文庫140-10 | ||
15 | さよならメラニー (またもや大いなる幻影) |
1974 | 創元推理文庫140-12 | |
16 | 共犯同盟 | 1975 | 創元推理文庫140-16 | |
17 | 砂の鎧 | 創元推理文庫140-13 | ||
18 | 三つの顔 | 1976 | 創元推理文庫140-15 | |
19 | 地獄でなぜ悪い | 1978 | 創元推理文庫140-14 | |
20 | 理想的な容疑者 | 1979 | 創元推理文庫140-18 | フランス冒険小説大賞 |
21 | 白墨の男 | 1980 | 創元推理文庫140-19 | |
22 | 呪われた女 | 1981 | 創元推理文庫140-21 | |
23 | 罠に落ちた女 | 1982 | 創元推理文庫140-20 | |
24 | 死神に愛された男 | 創元推理文庫140-23 | ||
25 | アラーム! | 1984 | 創元推理文庫140-24 | |
26 | 疑惑の果て | 1988 | 創元推理文庫140-25 | |
27 | En 5 sets | 1990 | - | |
28 | 狼の時刻(とき) | 東京創元社 創元ミステリ'90 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | 21のアルレー | 1985 | 創元推理文庫140-22 | ||
1 | 慈悲の鐘の音 | ||||
2 | 神経症の患者たち | ||||
3 | 見知らぬひとの子を宿して | ||||
4 | 雌鶏と死 | ||||
5 | 家 | ||||
6 | 「クリスマス、おめでとう!」 | ||||
7 | 信じ難い物語 | ||||
8 | 片腕の男 | ||||
9 | テスト | ||||
10 | ありふれた事件 | ||||
11 | 地獄へのツアー | ||||
12 | 赤い電話 | ||||
13 | 大典札の働き蜂たち | ||||
14 | わが友フランク | ||||
15 | 樅の木 | ||||
16 | 人情の問題 | ||||
17 | 「主の御心ははかり難し」 | ||||
18 | 阿呆は誰だ? | ||||
19 | 非常に特殊な被告 | ||||
20 | むさぼるばかりの情熱 | ||||
21 | 理想の相手 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | Simple question d'humanité 心やさしい女 (心優しい女) |
早川文庫「フランス・ミステリ傑作選2 心やさしい女」('85) HMM'84.5 |
「21のアルレー」所収の短編「人情の問題」の別ヴァージョン | |
2 | Un super clip 三面記事 |
東京創元社「鮎川哲也と十三の謎'91」('91) | ||
3 | 妻の義務 | HMM'06.11 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 美人学入門 ─私はパリのモデルを育てた |
読売新聞社('73) | カトリーヌ・アルレ | |
2 | カトリーヌ・アルレイ | 文藝春秋「推理作家の発想工房」('85) | インタヴュー |