フランス・ミステリ界の巨星
ジョルジュ・シメノンとも表記。メグレ警視シリーズで有名なベルギーの作家。フランス、特にパリを舞台とする作品が多いのでフランス人かと思いきや、そうではありません。また作家として安定するとパリを離れ、アメリカやカナダなどに住んでいたそうです。
ベルギーのリエージュに生まれ、最初は余暇にものが書ける仕事として聖職者か軍人を目指しますが、父親が体調を崩したため学校を中退し、菓子職人や書店勤めをします。
しかしそのどれもが長続きせず、身を持て余していた1919年、16歳の時にたまたま通りがかった新聞社〈ガセット・ド・リエージュ〉紙に新聞記者として採用されるという幸運に巡り合います。
そしてこれをきっかけとして短編小説や記事を発表し始め、1920年17歳の時に処女作中編ユーモア小説「アーチ橋にて」を発表、作家としてのスタートを切ることができたのでした。
ほどなくして画家の卵のレジーヌと結婚し、1922年にパリに移住。作家ビネ=ヴァルメールの秘書を務めた後、通俗作家ジョルジュ・イスタの口利きで大衆誌に18以上のペンネームを用いて様々な短編、大衆小説を発表します。
1931年になると、それまでにも端役で登場させていたメグレを主人公とする長編「怪盗レトン」を発表。その後は「メグレ最後の事件」まで数多くの長編・中短編にメグレを登場させています。
メグレ警視シリーズはトリックなどに大きな仕掛けはないものの、犯罪者や被害者の生活をよく知り、その生活意識や発想法について理解することで犯人を捕まえるというその独特の捜査方法が、見事な人間・心理描写もあいまって犯罪心理小説として比類のない完成度を見せています。
シムノンは大変な多作家で、200以上の作品を発表しています。 メグレものはそのうち84冊で、その他にも安楽椅子探偵ルボルニュが活躍する「13の秘密」や青年探偵エミールのシリーズなどもあり、またミステリだけでなく純文学の分野でも高い評価を得ており、「仕立て屋の恋」や「雪は汚れていた」などの名作を残しています。
なおメグレ警視シリーズはフランスにおいて何度も映像化され、そのたびに好評を博しています。
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | 13の秘密 | 1932 | 創元推理文庫139-2「13の秘密 第一号水門」 | ||
1 | ルフランソワ事件 | 1928 | |||
2 | S・S・Sの金庫 | ||||
3 | 書類第十六号 | ||||
4 | 奇怪な死体 | ||||
5 | B…中学の盗難事件 | ||||
6 | 偽名のポポール | ||||
7 | クロワ・ルウスの一軒家 (クロワ・ルース街の小さな家) |
早川文庫80-9「密室大集合 アメリカ探偵作家クラブ傑作選7」('84) | |||
8 | 『ロレーヌ号』の煙突 | ||||
9 | 三枚のレンブランド (三つのレンブランド) |
別冊宝石71('57) | |||
10 | 14号水門 | ||||
11 | 二人の技師 | ||||
12 | アストリヤホテルの爆弾 (アストリア・ホテルの爆弾) |
別冊宝石81('58) | |||
13 | 金の煙草入れ |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | Les Dossiers de l'agence"O" | 1943 | 読売新聞社「名探偵エミールの冒険1~4」('98) | 全14編の連作短編集 邦訳は四分冊 |
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名探偵エミールの冒険1 ドーヴィルの花売り娘 |
読売新聞社('98) | ||||
1 | エミールの小さなオフィス | 1938 | EQ'96.1 | ||
2 | 掘立て小屋の首吊り人 | EQ'96.3 | |||
3 | 入り江の三艘の船 | EQ'97.1 | |||
4 | ドーヴィルの花売り娘 | EQ'97.3 | |||
名探偵エミールの冒険2 老婦人クラブ |
読売新聞社('98) | ||||
1 | むっつり医者と二つの大箱 | 1938 | EQ'97.5 | ||
2 | 地下鉄の切符 | EQ'97.7(118) | |||
3 | 老婦人クラブ | EQ'98.1 | |||
名探偵エミールの冒険3 丸裸の男 |
読売新聞社('98) | ||||
1 | 丸裸の男 | 1938 | EQ'96.5 | ||
2 | モレ村の絞殺者 | EQ'96.7(112) | |||
3 | シャープペンシルの老人 | EQ'96.9 | |||
4 | ミュージシャンの逮捕 | EQ'96.11 | |||
名探偵エミールの冒険4 O探偵事務所の恐喝 |
読売新聞社('98) | ||||
1 | エミールとミンクのコート | 1938 | EQ'97.9 | ||
2 | 不法監禁された男 | EQ'98.3 | |||
3 | O探偵事務所の恐喝 | EQ'98.5 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | メトロチケット ─O探偵事務所事件簿 |
1996 | パロル舎 くらしっくみすてりー1('96) | 収録作品不明 |
2 | ラニーの囚れ人 ─O探偵事務所 |
パロル舎 くらしっくみすてりー2('96) |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | アルザスの宿 (山峡の夜) (山の十字路) |
1931 | 創元推理文庫228('60) 探偵倶楽部'54.12 京北書房('46) 春秋社 傑作探偵叢書('36) |
本格謎解き小説 ラベ警部 |
2 | 北氷洋逃避行 (北海の惨劇) |
1932 | 京北書房('46) 京北書房「運河の秘密」('52) |
本格謎解き小説 |
3 | 仕立屋の恋 | 1933 | 早川文庫 NV656 | |
4 | 赤いロバ | 探偵倶楽部'55.6-8 | ||
5 | 倫敦から来た男 (ロンドンから来た男) |
1934 | 河出書房新社 シムノン本格小説選('09) 京北書房('46) 春秋社('37) サイレン社('36) |
映画化('07) |
6 | 下宿人 | 春秋社('37) 探偵倶楽部'56.6 |
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7 | 情死 | 春秋社('37) | ||
8 | ドナデュの遺書 | 1937 | 集英社文庫('79) 集英社 世界文学全集42('75) 集英社 シムノン選集11('70) |
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9 | 汽車を見送る男 | 1938 | 新潮社 現代フランス文学叢書('54) | 純文学作品 |
10 | 港のマリー | 集英社 シムノン選集9('70) | ||
11 | 家の中の見知らぬ者たち (家の中の見知らぬ人) |
1940 | 読売新聞社('93) HPB(シメノン選集)803('55) |
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12 | 片道切符 (帰らざる夜明け) |
1942 | 集英社文庫('77) 早川書房('72) 集英社 シムノン選集4('69) |
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13 | カルディーノの息子 | HPB377 | ||
14 | ベベ・ドンジュの真相 | HPB627 HPB(シメノン選集)804 |
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15 | フェルショー家の兄 | 1943 | 筑摩書房 世界ロマン文庫10('70) | |
16 | La Fuite de monsieur Monde モンド氏の失踪 |
1945 | 河出書房新社 シムノン本格小説選('11) | TVドラマ化('04) |
17 | Trois Chambres a Manhattan マンハッタンの哀愁 |
1946 | 河出書房新社 シムノン本格小説選('10) | 映画化('65) |
18 | 判事への手紙 | 1947 | HPB(シメノン選集)805 | 純文学作品 |
19 | 雪は汚れていた | 1948 | 早川文庫 NV137 HPB(シメノン選集)801('55) 集英社 シムノン選集1('69) |
純文学作品 |
20 | 帽子屋の幻影 | 1949 | HPB(シメノン選集)809 | |
21 | L’enterrement de Monsieur Bouvet ブーベ氏の埋葬 |
1950 | 河出書房新社 シムノン本格小説選('10) | |
22 | 娼婦の時 (過去の女) (アナイスのために) |
1951 | HPB667 HPB(シメノン選集) 集英社 シムノン選集3('69) |
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23 | 新しい人生 | 集英社 シムノン選集5('69) | ||
24 | ベルの死 | 1952 | HPB327 | |
25 | リコ兄弟 | 集英社文庫('80) HPB288 集英社 シムノン選集6('69) |
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26 | 証人たち | 1955 | 河出書房新社 シムノン本格小説選('08) | |
27 | 可愛い悪魔 (かわいい悪魔) |
1956 | HPB434 集英社 シムノン選集8('70) |
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28 | 妻のための嘘 | 集英社 シムノン選集10('70) | ||
29 | ストリップ・ティーズ | 1958 | 集英社文庫('78) 集英社 シムノン選集2('69) |
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30 | 日曜日 | 1959 | 集英社 シムノン選集7('70) | |
31 | 闇のオディッセー | 1960 | 河出書房新社 シムノン本格小説選('08) | |
32 | ベティー | 1961 | 読売新聞社('92) | |
33 | 離愁 | 早川文庫 NV103 | ||
34 | ビセートルの環 | 1963 | 集英社文庫('79) 集英社 シムノン選集12('70) |
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35 | La Chambre Bleue 青の寝室 激情に憑かれた愛人たち |
1964 | 河出書房新社 シムノン本格小説選('11) | |
36 | L'homme au petit chien 小犬を連れた男 |
河出書房新社 シムノン本格小説選('12) | ||
37 | Le Petit Saint ちびの聖者 |
1965 | 河出書房新社 シムノン本格小説選('08) | |
38 | 猫(ねこ) | 1967 | 創元推理文庫139-4 | |
39 | 妻は二度死ぬ | 1972 | 晶文社('85) |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 | |
1 | Le 13 Coupables 猶太人ジリウク (十三人の被告) |
1932 | 春秋社「シメノン傑作集」('37) | クイーンの定員85 フロジエ判事、本格 |
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1 | Ziliouk ジリウク |
1929 | |||
2 | Monsieur Rodrigues ロドリーグ氏 |
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3 | Madame Smitt マダム・スミット |
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4 | Le 《Flamands》 フランドル人 |
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5 | ヌウチ | 別冊宝石79('58) | |||
6 | Arnold Shuttringer アーノルド・シュトリンガー |
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7 | Waldemar Strvzeski ワルデマル・スツルヴェスキー |
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8 | Phillippe フィリップ |
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9 | Nicholas | - | |||
10 | Les Timmermans チンメルマン夫婦 |
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11 | Le Pacha トルコ貴族 |
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12 | Otto Muller オットー・ミュラー |
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13 | Bus バス |
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2 | ダンケルクの悲劇 | 1932 | 春秋社「シメノン傑作集」('37) | G-7もの 邦訳は1-12までの抄訳 |
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1 | G・7號 (タクシーの中の男) |
1928 | HPB255「名探偵登場6」('63) HMM'70.11 |
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2 | カテリイヌ号の難船 | ||||
3 | 引越の神様 (移動幽霊) |
HMM'71.1 | |||
4 | 文身の男 | ||||
5 | 屍体紛失事件 | ||||
6 | ハン・ペテル | ||||
7 | 黄色い犬 | ||||
8 | モンソオ公園の火事 | ||||
9 | コストフィイグ家の盗難 | ||||
10 | 古城の秘密 | ||||
11 | バイヤアル要塞の秘密 | ||||
12 | ダンケルクの悲劇 | ||||
13 | L'Inconnue d'Etretat エトュルタの無名婦人 |
月刊探偵'36.6 | |||
3 | Les Sept Minutes | 1938 | - | G-7もの | |
1 | Le Grand-Langoustier 消失三人女 |
1931 | 探偵倶楽部'57.1 | ||
2 | 将軍暁に死す | 探偵倶楽部'56.12 | |||
3 | マリー・ガラント号の謎 | 探偵倶楽部'56.11 | |||
4 | Le Petit Docteur (チビ医者) |
1943 | HPB414「死体が空から降ってくる」 HPB438「上靴にほれた男」 |
チビ医者ジャン・ドーラン 邦訳は二分冊 |
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死体が空から降ってくる ─チビ医者の犯罪診療簿1 |
HPB414 | ||||
1 | チビ医者の嗅覚 | 1938 | |||
2 | 薄水色の服の令嬢 | ||||
3 | 女が叫んだ | ||||
4 | マルブ氏の幽霊 | ||||
5 | 十二月一日の夫婦 | ||||
6 | 死体が空から降ってくる | ||||
上靴にほれた男 ─チビ医者の犯罪診療簿2 |
HPB438 | ||||
1 | オランダ人のぬれごと | 1938 | |||
2 | 船客とその黒人奴隷 | ||||
3 | 赤毛男の足跡 | ||||
4 | 提督失踪す | ||||
5 | 非常ベル | ||||
6 | 砒素の城館 | ||||
7 | 上靴にほれた男 | ||||
5 | メグレとしっぽのない子豚 | 1950 | HPB(シメノン選集)807('55) | メグレ警視2編他 全9編 |
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1 | 寄港地・ビュエナヴァンチュラ | 1946 | |||
2 | しっぽのない子豚 | 1945 | |||
3 | 命にかえて | 1936 | |||
4 | しがない仕立屋と帽子商 | 1947 | 長編「帽子屋の幻影」の原型 | ||
5 | ベルカン氏という男 | 1946 | |||
6 | フォンシーヌの喪 | 1945 | |||
7 | 四号夫人とその子供たち | ||||
6 | Un Noël de Maigret (メグレのクリスマス) |
1950 | - | メグレ警視2編他 全3編 |
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1 | Le petit restaurant 小さなレストラン |
1947 | 角川文庫「贈り物」('78) HMM'73.12 HMM'89.8 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | La folle d'Itteville イドヴィル村の狂女 |
1931 | HMM'00.2 | 表題中編のみ収録 |
2 | Les Mystères du Grand-Saint-Georges 〈グラン・サン・ジョルジュ〉ホテルの謎 |
1937 | HMM'04.11 | |
3 | Bénis soient les humbles (英 Blessed Are the Meek) 幸福なるかな、柔和なる者 |
1947 | 早川文庫2-29「黄金の13/現代篇」 HMM'79.10 |
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4 | La chanteuse de Pigalle モンマルトルの歌姫 |
1952 | ジャーロ'00秋 | ジュスタン・デュクロ元警視 |
5 | A Matter of Life and Death 生と死の問題 |
EQMM'58.2 | 原題不明 | |
6 | The Case of the Three Bicyclists 三人の自転車曲乘師 |
EQMM'58.6 | ||
7 | Journey into Time 過去をたずねて |
EQMM'60.12 | ||
8 | ”ムッシュー五十三番”と呼ばれる刑事 | HMM'06.11 | ||
9 | 医師殺害事件 | 新青年'36夏季増刊 | 原題不明 | |
10 | G7號車の女 | 新青年'36新春増刊 | G7ものか? | |
11 | 海賊島 | 探偵倶楽部'56.7 |
No. | 事件名 | 発表年 | 邦訳 | 備考 |
1 | 私的な回想 | 1981 | EQ'86.3-'88.9 EQ'89.1-'91.1 EQ'91.5-'91.9 EQ'92.1-7 EQ'93.1-5 EQ'93.9-'94.5 |
【参考】「世界ミステリ全集9」(早川書房)