私立探偵 金田一耕助
(Kosuke Kindaichi)

　第二次世界大戦後の国内本格探偵小説界をリードしてきた巨匠・横溝正史の生み出した名探偵で、江戸川乱歩の明智小五郎や高木彬光の生み出した神津恭介とともに”日本の３大名探偵”に位置づけられるキャラクターです。

　名前の由来は世界的に有名なアイヌ語の研究家であった文学者、金田一京助と言われていて、出身地も同じ東北の生まれです。　また横溝氏本人によればキャラクターのモデルになっているのはクマのプーさんの原作者Ａ・Ａ・ミルンの「赤い館の秘密」で登場するアントニー・ギリンガムなのだそうです。

　1931年、19歳の時に上京し私立大学に入学しますが、日本の大学生活に不満を感じて一年で中退。アメリカに渡って皿洗いなどをしながら各地を彷徨い、やがて麻薬中毒になりかけますが、そんな時サンフランシスコで起きた邦人同士の殺人事件に偶然遭遇しこれを見事に解決。

　そしてそれが縁となってパトロンを得、25，6歳の時に日本に戻り、資金協力を得て私立探偵事務所を開くことになります。

　事務所は最初は東京・銀座の雑居ビルの最上階にありましたが、その後大森の割烹旅館の離れでの居候生活を経て、世田谷区緑ヶ丘にある緑ヶ丘荘の２階に事務所を構えるようになります。

　彼の風貌も非常に個性的で、東北出身ということもあって色白で中肉中背。服装には無頓着で、いつもヨレヨレの絣の着物に袴という身なりに穴の開いた足袋と下駄というのがお決まりのスタイルであると同時にトレードマークでもあります。

　また推理で興奮するともじゃもじゃの髪の毛をかきむしったり、どもる癖があり、見た目からは名探偵という印象は全く感じられませんが、これがかえって相手の警戒心を緩め、話を上手く聞き出すことに役立っています。

　その推理方法はもっぱら直感型の探偵法を用い、足跡や指紋の検分のような自ら物的証拠を集めることはその道のプロである警察官たちに任せますが、彼らが捜査に行き詰まって依頼を受けると、彼らの集めてきた証拠などを総合的に分析し、論理的に考え、そして結論を下していきます。

　彼のパトロンが岡山県の果樹園主であった関係から第１作「本陣殺人事件」では岡山で起きた事件の捜査を依頼され苦労しながらもこれを見事に解決。そしてそこで知り合った岡山県警の磯川警部とは固い友情で結ばれ、その後10作品ほどで共演しています。

　また「女王蜂」で初めて共演した警視庁の等々力警部とも、それ以降短編も含めて30以上の事件を共に解決していて、この磯川警部と等々力警部の二人が金田一耕助のよき補佐役として多くの事件に登場します。